俺は別に魔法や剣で何かしたいわけじゃない。
何かに滅ぼされそうになっているわけでもなければ、何かに攻めてこられているわけでもない魔法世界で、魔法やら剣やらで未開の地を切り開こうだなんて思ったこともない。
まして、俺がずっと暮らしてきた世界にはそんなものは必要ない。
一般教養といわれる科目ばかり成績のいい俺に、友人たちはそろって微妙な顔をする。
「みったんはさー…できるのにやらないから、ローにもアークにもあんな顔されるんだよ」
「友人は皆きびしいなぁ。俺、魔法クラスからの転科なのにぃー。普通に考えたら、できなくて当然でしょ?」
「これで?」
俺の手をとり手のひらを見た友人…ユスキラ・トトオリが、手のひらの潰れたまめを指でつついた。
「これは、一年やってきた結果でしょ?」
「俺たちの見てないとこで努力してるんじゃないかなーって思うんだけど」
「そんなん当然じゃん。見せちゃったら見栄も張れないじゃないよ。チミたち自分たちが3強とか言われてる自覚ある?」
俺の手を離し、俺をいやそうに見たユスキラは、溜息をついた。
「三強じゃないし。四凶だし」
「なんかまがまがしい言葉に変わった気がする上に、一つ増えてない?」
「お前のことだよ。お前の」
今までこの場にいなかったアーク・エルエが急に話に加わってくるものだから、俺はわざとらしく驚く。
「うーわーアークびっくりしたー」
「してないだろ。ぜったいしてないだろ」
四凶。そう呼ばれていることは知っている。
ローエル・リンディア・ロレンス。二年生にしてセカンドネームをもらっている二年の首席だ。魔法も少々使え、魔法剣士になることが目標らしい。
ユスキラ・トトオリ。ちょっと変わった名前のユスキラは魔法世界でも変わった部族の出で、踊るように剣を運ぶ。赤い髪の毛、褐色の肌と元気なカラーで、非常に軽い男である。
アーク・エルエ。アークも魔法が使え、理不尽な魔法攻撃と弓の連続に誰もが呻くという。けれど、息切れも早い。今後の課題は体力づくり。
そんな三人。三人まとめて三強といわれていて、二学年の主席から三席までが彼らだ。
それに、俺を加えるとかわいそうなことに、彼らは四凶といわれる。
魔法を途中どころか最初に投げ出し、挙句武器を使うここでクラスの下から何番といわれる俺が四凶とかいわれていることも納得いかないことなのだが。
「アークちんがーつーめーたーいー」
しくしくと泣きまねをすると、ユスキラが俺の胸でお泣き。と腕を広げてくれた。
俺は友人の厚意に甘えることなく、へにゃりと笑う。
「ユッキーのそゆとこ、好きよ」
「俺もみったんのこと好きよー?おっぱいの次に」
このおっぱい星人め。とからかっていると、アークが頭痛そうな顔で俺とユスキラを眺めていた。
というのも、ユスキラは俺にたまに俺の本気とやらを尋ねてくるが、追求するつもりはないらしく、ローエル、アーク両名が知りたいというか、実感したい本気とやらを茶化すことに付き合ってくれるため、おふざけが過ぎる感があるからだ。
俺は大好きなんだけどねぇ、ユスキラのそういうところ。
「ユスキラだって、みたいだろうが、コイツの本気」
「みたくないことはないけど。みったん、本気ださせようとしたら、きっと出してなんてくれないよ?」
よくおわかりで。
俺は次の授業に使う教科書を取り出し、ニヤリと笑ってやった。
アークから溜息が零れた。
next/ La-ta-da!top