second impact


自室に戻ると、同室者はご帰宅なされていた。
顔があったんで、とりあえず挨拶はした。
「ちわ」
「…ああ…」
さっさと俺の寝室に向かおうしていた俺を、そいつはじーっと見詰めて、俺が部屋のドアを開けたときにポツリと呟いた。
「宗佑(そうすけ)?」
俺の名前だった。
思わず振り返って、俺はそいつをじっと見詰めた。
知り合いだった。
「わり、ねみぃから、ねる」
「……お、おう…?…や、じゃねーよ!」
「しらね。お休み」
ばたんとドアを閉める。
やけに防音性があるって話をきいていたが、外で喚く知人の声もシャットアウトとはすばらしい。
俺は鍵を閉めて、すぐ寝た。
その日の夜の夢見は最悪で、ドアを蹴破った知人が俺を揺さぶり起こしてこういう夢だった。
「おい、何本気で寝てんだよ!つうか説明をしろ、どうしてこんなとこいんだよ!おい!つか、その歯型なんだ」
「カクカクしかじかだ」
「わかるかバカタレ!」
だとか言うのでおもむろに立ち上がり回し蹴りを食らわし部屋から追い出して再び寝た。
そういうリアルな悪夢だった。
おかげで寝不足だ。
その俺のかくかくしかじかは簡潔な説明になった。
「今度、転校してきた七井だ。自己紹介」
ガラッと引き戸をあけて入ったそこには、男…男…男…まぁ、男子校だ、男しかいない。
俺を見つめてシーンとしている。ソイツらを眺めるとなしに眺めて、俺は口を開く。
「両親の再婚でこちらに来ることになりました、七井宗佑(なないそうすけ)です。趣味はカラオケ。特技はスルーです」
といった俺は、クソなげぇ前髪をさらりと斜めに流し、短いほうの毛はそのまま。眼鏡はコンタクトにかえて、教壇に立っていた。
昨日の食堂と違って静かな反応だ。とりえあず教師に指された空席を埋め、お隣さんに教科書を見せてもらうことになった。
お隣さんは同室者で、知人で、昨夜の悪夢。
だるそうにこちらを見たあと、恨みがましそうな目で見続ける。
「…昨夜のあれは、正夢だったか…」
「ゆめじゃねーよ!」
つっこまれた。
「じゃあ、お前、昨日はもう一食いったのか。財布は大丈夫か?」
「てめぇのせいだよ!」
またつっこまれた。
「はい、勝瀬(かつせ)うるさい。イケメンが隣で嬉しいのはわかったから、静かに」
「やーい怒られてやんの」
「誰のせいだと…!?」
チョークが飛んできた。
担任教師の轟先生の本気を俺は見た。
俺は机に出ていない教科書を、隣の勝瀬基久(かつせもとひさ)の机に手をつっこみ、勝手に拝借するとペラペラと捲った。
「あ、これ、記憶済み」
「うわ、ムカツク。これだから化けモンは」
基久は置き勉タイプらしい。教科書が全部あったのだが、その全部を確認して、俺は、にやりと笑った。
どうやら教科書はいらないようだ。
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