fourth times


深夜の訪問者のせいで、俺は寝不足だった。
今日こそは寝てやろう。
俺の決心は固い。
下半身事情はすっきりしたが、頭は重たい。
なかなかどうしておいしい物件だったんだが、化け物同士のやることだ。
体力の続くまでやっていては、今日も寝付けなかっただろう。
今朝方、俺の契約精霊は窓から飛び降りると地面にずぶずぶと消えていったのだが、けろっとしたものだった。
二人してほどほどでやめた証拠だった。
「宗佑」
「あ?」
「昨夜、なんかこなかったか?」
俺とは違って地の気に愛されている基久は、あの大胆かつ、ひっそりとした進入をなんとなく感じていたらしい。
結構地の気を殺していたというのに、よく気がついたものだ。
「俺の契約精霊が」
「居たのか」
「つい最近、作った」
「いつ?」
「昨日」
基久の耳がヒュンと飛び出た。
そう思えば昨夜は新月だった。
月が出ない日は不調だといっていたが意外と元気なもんだなと、飛び出た耳を触る。フワッフワである。
「やめろ」
飛び出た耳を手で頭に押さえつけ、基久は嫌そうな顔をした。
「おーいお前ら、HR中だ。いちゃいちゃすんなー。ところで、七井。このクラスの特別自己紹介は受けたか?」
「いえ、まだですというか、先生が率先してすべきでは?」
それもそうか。と、HRをしていた教師が、一時間目を潰して特別自己紹介をしてくれた。
「じゃあ、まず、先生から。轟一誠(とどろきいっせい)226歳。精霊使い、精霊史担当だ。種族はダークエルフ」
轟先生の自己紹介を聞いた感想は簡潔だ。
なんと汚いダークエルフもいたものか。
髭面褐色の肌、その上ジャージ。
轟先生が自己紹介したあと、次々と自己紹介していく面々。
あるものは本来の姿をさらし、あるものは一部変幻させる。
リザードマン、スキュラ、ダークエルフに、ラライカンスロープ…等々、所謂化け物といわれる種類の連中が集まったクラスらしい。
なるほど、平気で基久が耳を出すはずだ。
ちなみに、勝瀬基久はライカンスロープだ。
「さて、じゃあ、七井、紹介お願いしようか?」
俺は少し悩む。
何になれば一番いいのだろうか。
解りやすいものがいいだろう。
一つ息を吸い、身をバラバラにする。
黒い塊が溢れて飛び出す。真昼間からやるにはしんどいのだが、一番解りやすい。
塊は翼を持ち、教室を騒がせたあと、もう一度俺になる。
「七井宗佑。たぶん千を超えた。七井になってからは16を数える。ヴァンピルだのヴァンパイヤだの吸血鬼だの、好きに呼んでくれ」
「先生より年上だぞー…まったく吸血鬼の気まぐれで遊んでくれやがって畜生。勝瀬を見習え。ぴっちぴちの16歳だぞ」
「あれの生まれたときから知ってますが。見習うところがないのも知ってます」
「おい」
「…勝瀬かわいそうに」
「見習えっつったのお前だろ」
残念ながらこのクラスに基久より若いやつがいないので、誰もがかわいそうなものを見る目で見ている。
年若い基久をからかっているだけなのだが、基久としては歯がゆいことだろうな。
この教室で一番の年長者である俺は基久の肩をポンと叩いた。
「諦めろ」
「クソ」
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