テフテフ3


俺は綺麗なものがスキだ。
キラキラキラキラしてるクリスタルグラス、宝石。
海の太陽光の反射とか。
洋式美にのっとった建物とか。
ものとか風景だけじゃなく、人も綺麗なのがいい。
整った顔、均整のとれた身体。
友達も恋人も顔じゃないけど、やっぱ顔からはいっちまう。
俺は面食い。
この学園に転校したのも、美形ハーレム、わっしょい!と、ここに通う友人が、面白半分に言っていたからだ。
おまえの顔面でか?って笑うと、中学の卒業アルバムを見せてくれた。
なるほど納得の美形の坩堝。
よし、ここに決めたと並々ならぬ労力と努力を費やして、この学校にやってきた。
まず、守衛。
ちょっといかついが男前。
画面越しにガン見をしていたら、見つめていると思われたらしい。
そんな目で見るなと照れられる。ちょっとキショい減点3。
俺を迎えにきた副会長も王子様風の線の細い美人。
お友達になりてぇなぁなんて思いつつ、ガン見。笑い方が上っ面ぽい、減点1。営業スマイルだってもっと自然だろ。
「不自然な…」
ポツリとつぶやいた言葉が聞こえたらしく、何故か感極まったらしく、ハグされてキスされる。
減点10。
実はうちの伯父貴が理事長で、伯父貴にとりあえず会いにいく話になっていたので理事長室へ。
相変わらず素晴らしい美形。足の長さ、顔の作り、及第点だが、俺の評価でマイナスをこえたことがない。
「ミツきゅぅ〜ん」
伯父は病的に俺が好き。理事長室の扉をあけた瞬間、椅子からダイブ。怪盗もびっくりなジャンプ力で俺を捕まえる。キショいウザイ。減点いくらしたらいい?
「みつきゅんのー同室者はーみつきゅんにーメロメロになったりしないからぁ」
「…及第点ならメロメロになってほしいっつの」
「それもないと思うからぁ」
ぶるな、伯父貴。きもい。
しかし、部屋にいく前から美人と一緒じゃないときたか。ちょっとがっかりだ。
俺は伯父貴をはがして、寮の部屋に向かう。
部屋に居た同室者は有体に言うと不良。
伯父貴は及第点ではないだろうといったが、そこそこ整った顔が、目付きと服装、アクセサリーで不良にみえるだけで、一応美形の類だった。
期待してなかっただけに、俺のテンションは少しあがった。
だいたいこの学校の顔面偏差値がおかしいのである。
「俺は木内満、よろしくな」
「ああ。坂崎だ。よろしく」
坂崎は素っ気なくそういった。
この容姿で、よ!俺坂崎!よろしくな!とか言われたら俺は、減点していたと思う。この態度は加点対象である。めずらしい。
しかも、素っ気ないが、別によろしくしたくないというわけじゃなくて、聞いたら答えてくれるし、しばらく慣れるまでは付き合ってくれる姿勢がある。
実は良い奴、加点5。
それにしても、さっきから気になっているが、坂崎のシルバーアクセサリーの蝶。すげー綺麗。
それをうまいこと使いこなしてる坂崎にさらに加点。
坂崎、実は、この学校来て会った人間のなかで一番評価が高い。
「なぁ、坂崎、そのシルバーどこのブランド?つうか、坂崎、鎖骨のラインいいな」
褒めちぎっている。
いまさらだが、いっておくと、俺の友人は、美形だなんて呼ばれる人種はそういない。一割もたぶんいない。
顔じゃないけど、顔。けどやっぱ顔じゃない。が、俺の結論だからだ。
それからいうと、坂崎は及第点どころか、最高から数えて3番内に入るだろう。
俺にアルバムを見せてくれた友人は言わずもがな最高の友人である。
あぁ、坂崎と仲良くなれたらいいなぁ。
俺が一方的に褒めちぎって、それを坂崎に流されて、とりあえず食堂に行くことにした。
食堂にいくと、副会長がさっきとは全然違う笑顔でやってきた。
そして眩しいばかりの麗人集団が…親友が恋しくなってきた。
あそこまで集まるといっそ、暴力なんだな。
だが、俺は綺麗なものがスキなんだ。少々怖いくらいガン見しておいた。
背が高い奴でわりと控えめにしてた奴が、びくっと身を震わせた。
おっとすまない。怪しい気配でもでていたか。
副会長と少し話をして、会長とも話をした。
書記のさっきびくっとしたやつが坂崎の傍でもそもそ飯を食い、その前で会計のチャラチャラしたやつが双子の補佐とかいうのとジャンケンを繰り返していた。
あぁ、美形パラダイス!
次の日、職員室に向かうと、ドンペリジャンジャンな教師がそこにはたっていた。
教師という職業を思うと減点せざるを得ない。減点5。でも話してみると普通にいい先生っぽい、見直し減点1に修正。そうか、センスがホストなのか。
教室にいくと、やっぱり顔面偏差値が高かった。
目立って美形なのが二人。
不良っぽいのと、スポーツマンっぽいの。俺の両隣。スポーツマンっぽいのはすぐ話かけてくれた。
が、俺はその隣の十人並が気になる。もしかしなくても、俺の親友だろあれは。
不良っぽいのは、なにやら、ずっと机に頬杖ついて窓の外眺めてる。
不意に、窓に顔が近くなる。
なんかあるのかと俺も窓の外を見る。
「お。坂崎じゃん」
坂崎明らかに遅刻。
と思っていたら、すごくびっくりした顔で不良っぽいのに見られた。
「おまえ…坂崎の知り合いかっ!」
胸ぐらまでつかまれた。
減点10。
「同室なんだよ…っ」
言った瞬間にクラスがザワッとした。
なんだなんだ、坂崎有名人か?とか思いながら、胸ぐらつかまれたままは癪なので少し抵抗すると、不良っぽいのは手を簡単に離した。
「そうか…同室…」
あとから親友に聞いたんだが。
不良っぽいのは潮見という立派な不良で、坂崎とは犬猿の仲だという噂だ。
よし、マイナス突入だな。と、思っていたんだがさらに後日、潮見が坂崎シンパ(と俺は呼んでいる)に尊敬されているのをみた。
真実は闇のなかか…
next/ 色々top