俺の好きなもの。
棒つき飴、シルバーアクセサリー、可愛いヘアアクセ、女の子。
お洒落に、お気に入りの漫画。
そんでもって、隣の席の渋谷。


隣の席の渋谷くん。1


渋谷が隣の席になったのはついこの間の席替え。
窓際の一番後ろの席。
渋谷は大抵眠そうにしている。
陽が当たって暖かいからだ。
俺もあの席だったら絶対眠かった。渋谷の気持ちはよくわかる。
「渋谷渋谷」
「……」
無口で、俺のことは好きじゃない渋谷は声をかけても大抵無視。
しつこく声をかけたら睨まれる。
けど、しつこく声をかける。
そうすると、渋谷は屋上にサボりにいく。
その間俺は渋谷の席で授業を受ける。暖かくてねむたいその席で寝ている俺は正直変態だと思う。
クラスの皆はそれをジャイアニズムだというけれど、知ったことじゃない。
渋谷が教室にかえって、それをみてするのは、眉間に皺を寄せること。
俺は週刊誌を読みながら飴ちゃんを食べてる。
「渋谷おかー。飴ちゃんにする?漫画にする?それとも、お、れ?きゃっ、ゆーくんてれちゃーう!」
丸無視して机にかけてあった荷物を持っていく渋谷はいけずだ。
後ろ姿を見送りながら、俺はつぶやく。
「あー…食い千切りてぇー…」
ガリガリと口に入れたばかりの飴ちゃんを噛み砕く。
誰かがひぃっと呟いた。
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