食欲、方言、好意、行為、言葉、欲求。
夏と放課後と隣の席1
正直にいうと、興味がなかった。
あいつは言った。
俺が好きだと。
後ろからうざいくらい抱きついてきて、邪険にしているとあいつは言ったのだ。
「好きやから」
至って普通に何の気負いもなく。
「食いたい、噛りたい」
性的な意味がまるで感じられない言葉だった。
一瞬背中に冷たいものが駆け上る。
食欲という意味でいわれていると、感じた。
食われると、本気で思った。
「やけど、好きやから」
動けずにいると、あいつは静かに言った。
「こわい」
何がと聞くこともできず離れていく体温に、安堵と不安を抱く。
「ほしい」
恐らく熱烈な告白をされている。
後ろにいるあいつの様子はわからない。
ただ、静かな言葉が刺さって痛い。
「寂しい」
標準語にはないイントネーションが耳に残って離れない。
「好きとか」
自嘲したあいつの声は冷たい。
「便利やわ」
あいつは言葉を残す。
「なんちゃってー。あは、本気にしたぁー?」
すべてないものにしていなくなる。
そして、俺の意識はあいつを探す。