悪魔でシルバー7



御堂が暴れているというから、俺は急いで控え室から御堂のいる場所へと向かっていた。
なぜ暴れているのかというのは詳しく聞けなかったのだが、御堂はストーカーを蹴り飛ばしたということは聞いた。
俺が怪我をしてまで捕まえたストーカーに、どうして近寄るような真似をするんだと頭を抱えたい気分になった。
御堂はいつもそうだ。
最後に俺の予想を超える。
いつもお決まりのように同じことをするというのに、何故か最終的に俺の予想を超えた。親衛隊に集団で責められたり、あれだけ他人に怖い思いをさせられたのに、より多くの人に見られる仕事をしたり。
思ってもみないことを次から次へと、本当に、飽きない。
昔はそれを面白く思っていた。
今はそれが、不安でもある。
御堂は、このままで大丈夫なのか。
俺が自問自答したところで、これの答えはでない。
出ない答えに苛立ち始めた頃に、御堂が暴れているという現場にたどり着いた。
御堂はストーカーと離され、数人に押さえつけられていた。
ストーカーはおびえた様子だったが、まさか、そんな、違うとしきりに呟いている。
俺はストーカーを刺激しないように御堂から距離をとり、声をかけた。
「御堂」
「ッ……」
俺に気がつくと、息をつめ、なんとか人の手から逃れようとする。
確かめたいんだろうなと思いながら、既に自分の世界に旅立っているとはいえ、ストーカーを刺激しない為にも御堂に近寄れない俺は、ガーゼを当てた左手を挙げて手を振った。
御堂が泣きそうな顔になったかと思うと、悔しそうに、それはもう悔しそうに、顔を歪めた。
「大丈夫だから」
それだけ声をかける。
一気に力が抜けたのか、大人しくなった御堂に、御堂を押さえていた数人が力を抜く。
御堂がその人たちの腕から解放され、こちらへフラフラと歩いてこようとするものだから、俺はストーカーに視線を向けたまま御堂を待ち、ある距離までくると、待ったをかけた。
「それ以上はダメだ」
少し俯き加減だった顔をしっかり上げ、御堂はどうしてと呟いた。
俺は首を横に振るだけで答えない。
「……どうして」
御堂が繰り返した。
俺は苦笑したあと、ストーカーを見る。
いなくなるまでは、御堂に近寄らないほうがいいだろう。ストーカーが急におかしな様子になったのは俺のせいだ。
少しすると漸くやってきた警察にストーカーは連れて行かれた。
その間に、御堂の思考はあらぬところに行ってしまったらしい。
ポツリと御堂が呟いた。
「……俺が好きだからか」
どこにどういって、そういう思考に至ったのか追求したかったが、それができる状況ではなかった。
その日の撮影は、ストーカー騒ぎで中止になった。
帰りの車の中、御堂が暗い雰囲気を漂わせるから、水木さんも浅野さんも、ただ黙って、明日は事情を説明するから休んでといって、静かにマンションへと送ってくれた。



悪魔でゴールド
後ろ向きになっていてはダメだ!
とは思うものの、よくなる。



悪魔でシルバー
おいおいマジかよ大丈夫かよ。
毎回自らツッコミをいれつつ、結局構う。



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