悪魔でゴールド2



マネージャーと都賀が話しているのは仕事の話だというのは解っている。
わかっていても、都賀がいい男であるのは世間一般から見ても明らかであるし、マネージャーも世間一般からみてできる女で、ちょっと出来すぎているから近寄りがたいが、都賀が相手なら問題無いだろうと思ってしまうから、俺としては大問題なわけだ。
しかし目の前の仕事に手がつかないというほどではない。
新人カメラマンがポラをとりながら話しかけてくるのをなんとなく受け流し、それとなく会話する。
憂いを満ちたシンは新人には毒だよなどというカメラマンにごまかすように笑いかけ、マネージャーのかわりに俺の様子を見てくれる事務所の人間が、あまり笑いかけたらカメラマンの方もたいへんだぞなどという。
俺は珍獣かなにかか。
もちろん、俺が笑ったらどの程度の影響力があるかなんてことは、トップモデルといわれる類の人間なのだから理解しているつもりなのだ。
だからってそんな風に言われて珍獣かと思わないわけでもない。
「なぁ、浅野さん」
「なんだ、シン」
「水木さんまだかな…」
「……水木じゃなくて、都賀くんを待ってるんじゃないのか?」
俺がわかりやすいのだろうか。都賀のことにかけては仕方ないと言えるが、俺は黙って首をゆるくふる。表面だけでも否定しなければならない。
「水木さんいい女だから、あのクソ野郎にナンパされてないかと不安で」
水木さんはいい女だから、都賀がとられないかと心配で、とは口が裂けても言えない。
「いやぁ…そんなことになったら、俺もまいるな。都賀くんいい男だし」
浅野さんは水木さんが好きだ。隠すこともなく、明るくアピールを続けている。それを水木さんはあのお調子者と、いっていた。
俺は浅野さんのそんなところが羨ましい。
「あれはいい男っつうか、態度でけぇだけのわがまま男っていうんですよ」
「誰がわがままだって?」
急に俺に声をかけてくるものだから、俺は、身体を震わせた。
「……てめぇだよ」
なんとか平静を装ったつもりだが、身体が動いてしまったのだから今更ごまかしようがない。
「水木が口説かれてないかってシンが心配していたぞーもちろん俺も」
「浅野くんのことはおいといて、シンに心配されたら嬉しいわ。でも、口説いてくれてもばちは当たらないわね。こんないい男なのだし」
水木さんの言葉に、都賀が俺にふふんという顔を向けた。
「真価の分かる人は分かるもんなんだよ」
俺が都賀の真価をしらない訳がない。誰よりも知っていると自負している。しかし、それがバレたら、俺の気持ちなんて都賀にすぐバレてしまう。過剰評価ではなく、都賀はそういうやつなのだ。
いや、もしかしたらバレていて、知らないふりをしてくれているのかもしれない。
そう思う程度には、都賀をいいやつだと思っている。




悪魔でシルバー
いい男だからとガードとして指名されることも。
またストーカーかよ勘弁しろよと思いながら、しっかり御堂を守るつもり。
仕事抜きにしたら、惚れた弱みってやつかと思わないでない。


悪魔でゴールド
笑って誤魔化すという処世術を身につけた!
しかし、微笑みに攻撃力がありすぎる。
ちゃっかり嫉妬したり、都賀を心の中で持ち上げたりと忙しい。

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