悪魔でゴールド4



学園のやつとかは恥ずかしいとは、よく言ったものだ。
デジタルフォトフレームを壊したとき、寝室にあったものをかわりにおいた。
寝室など、寝るときも使わないことが多い俺は、リビングルームの方が大事だった。
フォトフレームがそこにあるということが大事であって、電源を付けることがなかった。
だから、その中にどんな写真が入っているかなんて、忘れていた。
フォトフレームを二つかったのは、一年前だ。その前は、普通の写真立てが置かれていた。
俺自身の写真は、嫌というほど仕事で見ることが出来るため、飾る写真といえば人と一緒にとった写真や風景写真だ。
人と写っているものも仕事が忙しくなってからあまりとっていないし、仕事が忙しくなる前、大学時代も友人が多いわけでもなかったし、半分位はストーカーに怯えてそれどころじゃなかった。
結局、一番多いのは十代の頃の休暇の写真と、実家で毎日寝泊りしていた頃になる。
前のフォトフレームにはそういった写真と、一年前にモデル仲間と遊んだ時の写真とその他が入っていた。
先ほど壊れたものには、学園時代の俺以外と写った、珍しい写真が収まっていた。
俺の周りは、盗撮されることの多い連中ばかりだったから、カメラというものがあまり好きではないという奴ばかりで、まして自ら撮影しようというやつもいなかった。
しかも、俺と一緒にカメラのフレームに収まっていいのは決まった人でなくてはならないとかなんとかで、学校行事でとられた写真は、いつも不自然なまでに一人か、見知った顔しかいなかった。
そんな俺と最も多く、一緒に撮られた人物がいる。
神出鬼没で、ひとところにじっとしていることがないともいわれたそいつは、委員の関係で、どうしても行事中は俺と一緒にいることが多かったし、学園では常に俺と並び称されたから、カメラのフレームに意識的に収めたかったんだろう。
そう、元風紀委員長である都賀だ。
あのフォトフレームには、やたらと俺と都賀の写真が入っていた。
不自然ではない。都賀も俺とばかり写真を撮られたことは知っているし、実感していることだろう。
けれど、俺は都賀とだけ写真を撮られていたわけではない。
しばらく、フォトフレームが映し出す写真を見ていたら、気がつくだろう。
他の写真がないということに。
正直、もう、会わないと思っていたのだ。
一時期、都賀に関するものを排除するかのように、実家に戻って寝泊りしていた時もある。
しばらくすると、実家にいても……家族といても、物足りないと感じるようになっていた。
結局、都賀が残したものが溢れるこの部屋で暮らして、都賀の姿を探すたび、落胆しないよう、都賀はいないとわかるように写真立てを置いた。
本人がいたら、こんなことは絶対にしない。
たとえ、入ってこないと思われる寝室でもだ。
けれど、時間が経つにつれ、都賀がいた名残なんて薄れて、それを補完するかのように写真が増えた。
忘れていくのだ。
曖昧で、あやふやな記憶になって、こうしていたな、ああしていたなと思うのに、鮮明には思い出せない。
デジタルフォトフレームをかったのは、写真たてが増えて、これではダメだと思ったからだ。
全部なくすには、まだ、俺は現実を見れなくて、せめて、一つのフレームに収まる形にした。
それで、電源を落としてしまえば、あっても、ないように思えた。
これで、きっと大丈夫だ。
そう思って、一年。
仕事が忙しいこともあった。やましい気持ちがあるからか、フォトフレームを意識の外におくことにしていた。
それが、今になって、どうして、都賀が俺の近くにいるのか。
「くそ……疲れる……」




悪魔でシルバー
職務をまっとう。
新しい電化製品は一通り使えるようにしている。


悪魔でゴールド
重たい片想いに自分でも辟易。
新しいものはなんでも割と好き!

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