悪魔でシルバー5



御堂の本格化してきた趣味の料理を朝も味わって、御堂と元気に事務所に出勤。
俺は水木さんに聞きたいことがあるといって、御堂から離れる。
もちろん、御堂から離れる際、浅野さんに御堂のことをお願いすることも忘れない。
今回の警護は密着体制ではあるが、24時間警護ではない。
だいたい、24時間警護は一人でやるものではないのだ。一人で、24時間、一人の人間を何日も見ることは不可能である。守っているのは守られている側と同じ、人間だ。生理現象もあるし、睡眠も必要だ。
睡眠は三日くらいならなんとかできないこともないが、精神的にも肉体的にも無理を強いなければならず、いざという時に使えないということになりかねない。それだけは避けたいものだ。
そんなわけだから、ローテーションできる人間が本当は必要なのである。
今回は、俺だけの派遣であるし、マンションに手紙は届くが特に何かが盗まれるということもなく、犯人の手が入りにくい場所もある。
盗聴器の件も今朝メールを送ったので、おそらく御堂がいない間に、宮藤さんがほかの盗聴器も調べてくれているはずだ。
うちの会社にそういったことも依頼できるし、契約内容によっては俺が会社に呼びかけ、色々やってもらうこともできる。
しかし、今回は周りの協力が仰げるし、対処している人間が中途半端な対処をしない人たちなので、会社にはそういった話を通していない。
当然、報告はきちっとメールでしている。
「御堂のデジタルフォトフレームですか?」
「はい、買いに行っていたとかでもいいんですが、わかりますか?」
水木さんは、フォトフレームのことを覚えていたようで、すぐに思い当たったらしい。
「それなら、私が買いに行きました。急に空いた時間に電気屋に行きたいというから、慌てて止めたんですよ。ちょうど繁華街近くでお仕事してた時期だったし、ふらっと行っちゃいそうで」
御堂はフラフラと外に出られては困る人気者だ。
あの学園にいたし、あの学園にいなくてもあれだけ注目される容姿とスタイルを持っているだから、他人の視線というものを気にしてもいいはずである。しかも、御堂はストーカーのみならず、変質者にも狙われていたので、本人も気をつけているだろうし、痴漢被害もあり人ごみもあまり好きではなかったと思う。
何故そんな中、フォトフレームを買いに行ったのかが少し解らない。
「どこで買ったとか、フォトフレームを買ったことを知っている人とかいます?」
フォトフレームを買った場所はすぐに答えてくれたが、流石に、フォトフレームを買ったことを知っている人物というとあまり思い当たらないのか、水木さんはしばらくどこか遠くを眺めていた。
「あ、そう思えば、撮影に来てらしたカメラマンの先生と御堂が話し終わったあとで、買ったわよって知らせましたから」
「その話を聞いている可能性があるって感じですかね」
「ええ」
「あと、買ったことを知らせたということは、御堂さんに渡すまでどこかに置いておいたんですよね」
「控え室に」
俺は一つ頷いた。
「ありがとうございます」
犯人かもしれない人間を探るのは、要注意だと思われる人間から御堂を守る上で大事だ。だが、特定して間違えたとあっては御堂を守ることの障害にしかならない。決め付けはしない。
「いいえ。フォトフレーム、何かあったんですか?」
「……実は、フォトフレームに盗聴器が」
控え室にフォトフレームがあったのなら、控え室に入れる人間であれば誰にでも盗聴器が仕掛けられたはずだ。
「知り合いに、御堂のストーカーが…?」
「可能性だけですから」
不安がられぬように笑ってみせる。だが、これだけは聞かなければならない。
「その時の撮影メンバーはわかりますか?」
「スタッフも結構出入りしているので……そうですね、取り仕切ってくださった方に聞いてみます」
「ありがとうございます」

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