外に出ようとしたら、晃二もどきが何も言わずについてきた。気持ち悪い。
食堂が騒がしくないことについて、首を傾げて俺に聞いてくるし、それについて微妙な気分でいたら、どうした?なんてきいてくるし。
止めて欲しい。
晃二もどき、顔が似ているだけに気持ち悪い。
飯をたべても、こちらに何かいる?とかきくし。いらねぇよ。とだんだん苛立ってきた。ここで暴れてもいいだろうか?
晃二に本気で会いたい。ものすごく会いたい。なのに、晃二もどきしかいない。
せっかく朝…晃二が部屋にいる時間に起きて、朝食も一緒に食べられるはずだったのに。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
気持ち悪すぎて、食事もそこそこに、晃二もどきから離れようとすると、腕をつかまれた。
「何、苛立ってんだ?」
わかっているなら、離して欲しい。
ここで、本物の晃二なら、こうだ。
『何いらだってんの?』と同じように腕を掴むけど、ニヤニヤニヤニヤ笑って。
人の痛いとこついてきたり、さらに苛立つようなことしてきたり。
でも、この晃二もどきはこうだ。
心配そうな顔をして、どうした?って態度だ。
だから、余計に腹がたつ。
「どうも、しない…離せ」
その言葉に、晃二もどきが驚いた。
驚かれるようなことはしていない。
とにかく、腕を振り払って、俺は食器を返して食堂を出た。
やっと、晃二もどきが視界にはいらなくなった。
自室にこもって二度寝したら、晃二はもとにもどっているかな。
そうおもって、自室に戻った。



おきて、居間にいくと、テレビを見ている晃二がいた。
「晃二」
声をかけても、振り返らず、んー?と生返事をする、晃二だった。
「晃二」
もう一度よんで、ぎゅっと抱きつくと、晃二が振り返った。
「さっちゃん、なぁに?」
振り返って名前を呼ぶ晃二は、もどきじゃなかった。晃二だった。
嬉しくて、晃二の名前を何度か呼ぶと、晃二は、俺の頭を撫でてくれた。
なんだろう、なんとなく優しい気がする。でも、晃二、だ。
「用事じゃないの?」
「…嬉く…なって…」
抱きついていると、晃二が笑った。それはもう、楽しそうに。
「やっぱ、さっちゃんはこれよねぇ」
と、俺の唇を舐めた晃二は、なにか、久々にやる気だ。
「ごめんねぇ、今日は、加減できない」
やる気の晃二が手加減なんてできた覚えがない。俺がいやだといったところで無理矢理やるし。
「…加減、なくて、…いい」
今日は、特に、してくれなくていい。
晃二に会いたくてたまらなかった。
晃二に触りたくて、晃二を確かめたくて。
「さっちゃんってば、かわいいの」
ああ、晃二だ…。