起きたら、さっちゃんが変でした。
「あ、さっちゃんおはよ。今日は早いのねぇ」
ベッドからさっさと抜け出して服を着ている途中だった俺に、さっちゃんは心底驚いたような顔をした。
何?
そんなことを思いながらも、俺はそれを無視する。
「二度寝するんだったら、自由にしてね。じゃあ、俺、行くから?」
さっちゃんは色んなことを考えて、最終的に、何処に?っていう考えを浮かべたようで、首をかしげた。
俺はあえて無視をした。
「伝えたいことははっきり言ってくれないと、晃二わかんなーい」
そして、さっちゃんを残して、俺は部屋の外に出る。
いやはや、何、あの無口すぎるさっちゃん。
しかも、俺がベッドにいないことにびっくりしてなかった?ちょっと、今更じゃないの。
少し面白くなって、俺は鼻歌を歌いながら部屋から出て行った。
そんで、食堂に行ってびっくり。
きゃー!晃二さまがお一人で…!!
皐さまがいらっしゃらないなんて、ご病気かな…
なんでもいいよー!晃二様かっこいいいいいい!
って、騒がれた。
何それ。
食堂行ったら、よー那須。ダーリンまた置いてきたのかよー。とか。
那須、灰谷さまからはなれろよ。とか。
ねぇえわー那須、派手だわーとか言われるのになぁ。
なんで、これ?
今日の服装は、大人しいけど。
なんで、これ?
きゃーとかいいながら、手を振られるので、一応振り返してみたけど、なんでこれ。
だいたい、うちの学校ってきゃーきゃーってあんまり言わないんだよね。なのに、これ…。
「……!」
まぁ、いいかと、とりあえず、席に座ってご飯をたべていると、さっちゃんがやってきたんだけどね。
やっぱり驚かれた。
なんでこいつ、一人で飯食ってんだろみたいな感じ?
いや、いつも一人でくっちゃってますよ?朝は大抵一人ですよ?
たまにさっちゃんを腰につけて引きずってきますがね?
やっぱり、俺はさっちゃんを無視してご飯を食べ続けるわけですけど。
「こう…じ?」
俺の名前をたどたどしく呼ぶさっちゃん。不思議におもってるとき、納得いかないときはだいたいそんな呼び方をする。
でもさぁ…なんなの?いつもなら、うざいくらい近寄ってべったりしてくるのに、今日は自分では踏み出せない感じ。
自分から来ないと俺は無視続けるよ?だって、今、ちょっと、泣きそうだよね?俺、いじめっこなの。泣いてもするよ。
「あ、さっちゃんご飯?そろそろあくから、ここ座るといいよ」
なんて。
一瞬、え、一緒に食べないの?的な空気がでたけど。
一緒して欲しいなら言わないとね。わかってないわけないのに、今日はさっぱり行動に出ない。
変なの。
そんなこと思いながら、立ち上がる。
「じゃあね」
と去っていこうとしたら、服の裾をつかまれた。
ねぇ。控えめだよね。なんなんだろ、これ。ちがうでしょ。こんなことしたら、俺がどう行動出るかわかってないの?普段なら絶対しないよね、こういうの。
「なぁに?」
一応きいてみるけど、さっちゃんは答えない。
ただ、俺を見る。
ここにいてくれと言わない。
言わなきゃさぁ、俺は無視できちゃうんだよ?今はそんな気分だし。
さっちゃんの服の裾を掴む手を払うと、俺は、にっこりと笑った。
「用がないなら、行くね」
さっちゃんが、泣きそうな顔をした。
あーなんか、ちょっとイラッとしたんだけど。なんでかなぁ…。