向き合うなんて、簡単じゃないけど、独り言だけなら呟けるよね。 いや、ホント、尚ちんとハルルンはそういう意味では偉い。 ハルルンは振られた振られたと騒いで笑っているが、そこまで来るのに時間が必要だったはずだ。 振られたのは文化祭のときだ。 ハルルンは生徒会室に泣きに来た。 俺はそこでさっちゃんライブを聞いていた。 いまや、俺の前でも歌ってしまえるさっちゃんの生歌は聴いていて楽しいし気持ちいいけれど、わざわざ聞きにいくものじゃない。…だって、聞きにいくと、今はさっちゃん喜んじゃうじゃない。 わかっててもしょんぼりするさっちゃんが可愛いし、嫌がってるのみてるの大好きなんだよねぇ。性格悪い?知ってる。 さっちゃんは愛人関係始めた頃から何となく、気がついていたようだけれど。 気を引きたくていじめる子供と違って、俺がさっちゃんを虐めるのは、それが単純に好きだから。嗜好の問題といってもいい。 俺を飽きさせないために、さっちゃんが自分自身を虐めるようなことをしたのはそのためだ。勝手に自滅していくの、結構楽しんでた。これじゃダメだなんて、誰が言っても、止めることもしない。逆にそれを助けただろう。 「那須さん、ストレートのみですか?」 「あー…レモンなら切ったんだけどねぇ」 ミルクは、考え事してて、冷蔵庫にお留守番させちゃったー…とヘラヘラわらってみせると、じゃあ、レモンお願いします。と笑ってくれるきーくんは、本当にいい子だ。ほんわりするよねぇ。 こんなほんわりする光景の中、爛れた嗜好について考えている俺の態度も表情も上っ面…というわけでもない。 実をいうと、座右の銘は何でも面白い。なんでも楽しい。なんだよねぇ。 だから、こうやってふつーに癒されて、ふつーに爛れた嗜好について考えても楽しいわけ。 それなのに、何か自業自得なものごとが怖い、だなんて。 面白くないし楽しくない。 そう、自業自得だからこそ、気がつきたくない。気がつかないふりをする。 だって、正当化しなくても、自分のせいだってわかってても、見たくないものは見たくないし。 だからこそ、向かい合うなんて、気力体力時の運…だと思うわけだ。 「晃二、考え事…何?」 「そうね、さっちゃんМじゃないのに、かわいそうねってことかしら」 「望むなら、頑張る」 紅茶をカップに入れてもっていくと、きーくんと俺の会話を聞いていたさっちゃんが、尋ねてきた。 うん、さっちゃん頑張らなくていいよ。別にMっ子いじめて楽しいわけじゃないからね。 「んーん、それはご遠慮するよん」 ちゃんと頑張らなくていいよと主張しておく。 さっちゃんだったら、頑張っちゃうからね! 「さっちゃんもうちょっとさ、俺に沿わなくていいよ。抵抗してくれたほうが、面白い」 ぽろっと俺が零した言葉に、生徒会室がアイツ、とんだ鬼畜だぜ…!とざわめいた。 うん、知ってる。 next/ 二人の変装top |