「色々な深い事情があって、転校してきました。篠原啓祐です。学園のことは良く解らないので、色々教えてください」
反応はあれだ。
ざわっ…て感じだった。
見ろよ、あいつ!那須晃二と一緒だぜ!?
ええー!?やっぱり何でもできるのかな!?
変装、だよな。やっぱり。
何、その『なすこうじ』。茄子?工事?茄子は料理に使うだけで充分だろおい。てか、なんで紫なんだ。
と思っていたら、恭治が嬉しそうに手を振った。おいおい同クラかよ、目立ちたくねぇって、無理だって言ったじゃねぇかよ。
恭治が手を振ったことに、更にざわつくクラス連中。
やっぱり、あの人もすごい人だって!
ってさぁ。なんでこうも目立ってんの?すごい人って何?つか、変装ってバレバレか?バレバレなのか?確かにねぇよな、このヅラに眼鏡。だけど、銀髪のが目立つ……のか?風紀の連中もそうだけど、このクラス、黒髪居なくね?おいおい日本男児。
「そーちょーはやくー」
って、何。隠す気ない!?恭治おまえ、ちょっと!
「え、転入生、総長なの?」
恭治に声をかけたのは、ヘアカラーグリン!グリンなだけにいいんだよーってなわけか?いや、違うだろ。もうなんだ、俺がいうのもなんだけど、てか俺は地毛だから。もうね、落ち着けよお前ら。昨日からなんでそんなにカラフルなんだここ。学校だろ?学校なんだろう??
「うん、あだ名ー」
あ、なるほど。ちょっといい感じに誤魔化せたんじゃね?
「あっは。そんなにご機嫌じゃ、誤魔化せないって」
「じゃあ、正直に総長」
だめじゃん!
ていうか、担任はいいのか、この動物園状態。
ていうか、俺の席何処だよ。教えてくれよ。恭治、はやくってはやくじゃねーよ。席半分くらい埋まってねぇじゃんどこなんだよばか!
「はいはいはいはい、篠原は湯木の隣に座っていいから、席ついてー」
って、やる気ねえ!
近寄りたくねーな、目立つし…て、もう、目立ってるな、いいか。
ずんずん歩いて恭治のところに向かう。
気のせいでなければ、俺、クラスの連中にすごくキラキラした目でみられてるんだけど。居心地悪い。総長発言のせいだろ、恭治め…。
「昨日無理だっつったのに」
ぶつくさいいながら隣へ。
「そーちょーいらっしゃーい」
機嫌いいな、恭治。俺はおまえのせいで、ちょっとふきげんだけどな!
「あ、俺、今田修平(いまだしゅうへい)しゅうちゃんってよんでちょーだい」
グリンの髪の奴は、そういって笑いかけてくれた。しゅうちゃん、いいやつ。なんか、恭治と一緒で、アクセサリーとかいっぱい付けてるようなかんじだけど、なんか、天の幹部とかと違って不良のくせに馬鹿っ!って罵りたくなるようなことはない。なんか安心した。この学園なら、美形だ!って言われる類じゃない。他の学校ならそれなりにもてるんだろうけど…。
でも、しゅうちゃんは、へらへら笑いながら更に続ける。
「でもさ、篠原、天の総長なんだろ?俺さー、篠原消えてから身長めきめき伸びたしー髪色変えちゃったからわかんないかもだけど。同盟のスネークの総長だよ」
……あれ、ココ、オボッチャンガッコウダヨネ?
スネークとは確かに同盟だった。
スネークは小さいチームで、がんがん喧嘩してるとかじゃなくて、なんだろう、親兄弟親戚が不良をしていた。それをかっこいいと思ってた。そんで気がつけばこうなってた。って連中がおおくて。
たまたま、天の話をきいて、その場ののりで同盟を組んだ。…みたいな感じだったと思う。
そこの総長の髪の色はオレンジで、俺より背がちっちゃくて…………
「詐欺だ…」
俺より、そう、俺より小さかった。
今は座ってる。でも、わかるくらい、でかい。
足が。あしが長いんだよ、畜生!
「あはー。素直だよね、篠原〜」
「あ、いや、啓祐でいい」
「じゃあ、すけちゃん」
かくさんはどこにいるんだろう…?
なんというかさ!俺は、この学園きて二日。しかも、教室とかいうとこにきて一日しかたってないけど!
なぁ!なんなのここの連中!!
「すけちゃんとか、いい!そーちょー俺もすけちゃんいい?」
恭治呑気だな。本当のんきだな。
俺は呆然と席に座り、頷く。
「十夜がいいっていうなら、いっていい…」
授業もちゃんとやってるけど…今まで行ってた学校とどう違うんだ。というかんじだったので、俺はマイペースに皐にメールを送った。
それが、授業中。
メールがきたのは休み時間。
俺は、昨日の皐の同室者って誰?ってきいたのに、皐の答えはいつも通り短い返信だった。
『本人に聞いて』
皐はメールのほうがわかりやすい。
すごく簡単な返事をしてくれる。
けれど、だ。
コレは嫌がってるんだろうか。
「恭治、なぁ、恭治」
この教室なら別に恭治呼び捨てたって、仲良くしたって、目だったって平気だ。
だって、もう目立ってる。
クラス連中に『篠原さん』ってキラキラした目でみられてる。特に不良とか呼ばれるんだろう人たちに。
くそ…総長ってバラしてんじゃねぇよ、ばーかかーば。
「なぁーあにー?」
「皐の同室者って誰?てか、このメール、なんか嫌がってんの?」
恭治はそのメールをみて、視線をうろうろさせ始めた。
おいこっち見ろよ。
「あの…あのねーすけちゃんそーちょー」
なげーよ。どっちかにしろよ。
「皐が駄目ーっていうなら、なっちゃんに関しては、ホント、駄目なんだよー」
「なっちゃんって皐の同室者?」
あ、いっちゃった。って顔をした。人のこといえねぇけど、けっこう口軽いというか考えないよな、恭治。
「うん、まぁ……。あああ、まぁ、その…とにかく、なっちゃんのことは、教えてくれないし、教えないことになってるー」
「なんで?」
「や、そのねー…すけちゃんそーちょーに、皐、べったべたでしょー?」
なげぇって。
ま。皐は確かにベタベタだと思う。
ワンコってああいうのをいうんだって思うくらい、俺にベタベタしてくる。なんか、懐かれてるんだよなぁ。
「そんで、そーちょーのこと、フツーに自慢するでしょー」
するの?俺は聞いたことねぇから知らんけど、するんならするんだろうな。何を自慢するかは知らんけど。
喧嘩強いとか?それ、自慢になるのか?銀髪天然ものだとか?俺、実は黒髪のが良かった。
「でもね、なっちゃんのことはまったく、ひとっことも、もらさないの。なっちゃんはね、そういうのは、どうでもいいっていってるんだけど、でも、皐は、駄目なんだってー」
……なぁ。
ここはやっぱり説明上手の十夜か遼がいいよな。聞くの。なんつーか、ちょっと俺が悪かったと思う。