「そっか、ありがと、恭治」
笑って言ったけど。恭治、合いの手つーの?アレをいれるのはうまいんだけど、一人で話すとわりとまとまんねーよな、説明とか。
や、ひとのこと言えねんだけども!
こりゃ、十夜に聞くしかねぇなと思って、十夜にメールしたら、電話がかかってきた。
おい、ココは学園内だぞ、いいのかよ。とおもいながらとってしまう俺。
「はい」
『総長、メールはもっとわかりやすくお願いするっス』
や、解りやすくしたつもりなんだけどな。いきなり電話かけるほどか?
『…で、皐の同室者のことっすけど。…皐に殺されるんで。昼休みにでも案内しますから、直接本人に聞いてください』
って、メール内容わかってんじゃんか!
つか、なんで、そんなに皐怒るんだ?殺されるとか、ただ事じゃないぞ。なぁ、なんなんだ?なんなんだ?ちゃんとおしえてくれよ!
と、思っているとチャイムが鳴った。やべッと言ったのは十夜だった。
『じゃあ、そういうわけで』
って切りやがった。
なんだ?授業ちゃんと受けてんのか?十夜、意外と真面目だなー。全部ここみたいなら、そこまで真面目にする必要なくねえ?結構、ゆるいというか、注意すらしねぇぞ、携帯出しても。
「十夜なんて?」
「あ、あー。なぁ、あいつ、ちゃんと授業受けてんの?」
「ん。十夜はプライドが高いからー、クラス落ちなんて冗談じゃねぇ!ってねー」
「は?」
クラス落ちってなんだそれ?と不思議そうにしていると、横からしょうちゃんが教えてくれた。
「水城は、ずっと成績がいいクラスにいるんだよ。すげーよ」
成績が…いい?
あいつ夜遊び上等!喧嘩上等!じゃんか!…いや、であった当初は、なんか真面目君にも見えないで無かったけど、中身はいまと大差ないし。変わったの外見だけだし!
そう思えば、急に変わったんだよなー…高校デビューという奴だろうか。あーでも、まだ高校生なってなかったなーあんんとき。遼とかはそのままだったんだけどなぁ。
「つか、成績いいクラスって?」
「あれ、すけちゃん、説明きいてない?」
「ん、されたけど、聞き流した」
学校の説明とかなげーもん。雅孝さんがしてくれたんだけど、なげーっつって耳かいてたら困ったように笑われた。
いや、だって、なげーんだもん。
「あー…えーとな。この学園な、クラスがA〜Dまであって、俺らDクラスじゃん?」
「おう」
「Dってのは、頭のわりーやつばっかが集まるクラス」
はい?いや、俺、わりーけど。
まぁ、転入試験もうけてないし、そりゃしゃーねぇけど。
「金さえ積めば入れるし、卒業もできるようになってる。…大学部にはいけねーけどな。で、Aってのが十夜の居るクラスで、頭いい奴らばっかり集まってるクラス」
「はぁ」
生返事になるもの仕方ない。
十夜が頭いいって?いや、よくしらないからなんともいえねぇけど、でも、信じられねぇ。
「BとCはAとDの間。Dより頭いいのがC、Cより頭いいのがB。Bより頭いいのはAってかんじ」
「で、十夜はBになるのがいやっていってるんだよー」
………。
とりあえず、十夜は真面目に授業受けて、成績おちないようにしてるってことか?そうなのか?
プライド高いってのも知ってるんだ。あいつ、負けるのも嫌いだもんな。プライド高いって言ったら遼も高いし…もしかして、遼も頭いいかんじかな?あいつなら、納得だけど。
時々、何言ってるかわからないくらいだからな、遼。



そんなわけで昼休み。
授業中に早弁して行った、二年生の教室…てか、友人一号二年生だったのか。
十夜が俺を教室までむかえにきて、教室どころか廊下も騒がしくなった。
そう思えば、風紀委員やってるんだっけ?つか、なんできゃーとか水城様〜とかいう声が沸くんだ?ねぇわぁ…。
何でか恭治もついていくといって隣を歩くものだから、きゃぁかっこいー風紀委員会だよ〜とかいう声も聞こえたり。うるせぇえ!って思っていたところに同室者登場。
「よー水城ってか、後ろの、うちの同室者じゃん。洗髪させてー」
まだ言うか!今朝は、なんだそのヅラとかいってすげー嘆かれて鬱陶しかったのに、本当鬱陶しいわ!
「今、登校かよ、戸田。遅刻タグきられたくなかったらもっとこっそり来いよ」
後から聞いたんだけど、尚は俺と同じクラスで、この日は昼休みに漸く登校。風紀委員である十夜はよく、尚の遅刻を注意しているらしい。遅刻タグってのはその時に使うものらしいけど、何であるかは興味が無かったんで聞かなかった。
それにしても…ああ、目立つ…。尚まで一緒についてくるから、何かとんでもなく目立つ。ていうかみなして俺を見下ろすな馬鹿もん!くっそ、ちょっと背が高いからって!!
思わず逃げる…が、あいつらも尋常じゃねえくらい早かった。おい、十夜笑ってる場合じゃねぇよ!
すげー見られてるし、あのオタク何?うわ、またかよ。きっとまたすごいひとだってー。て聞こえてくるし。…ってなんなんだ。俺みたいのがもうひとりいるのかよ。もっさりでめがね…て、あれ、友人一号ももっさりメガネでね?
と思ったところで、二年の教室ついたんだけど。
そこで十夜がなんかいってたんだけど、俺はそれどころじゃない。
そこには副風紀委員長と、天の特攻隊長もいたからだ。
てか、また幹部勢ぞろいだよ。おまえら仲良すぎだろ!
遼と皐がパンを持って何処か行こうとしていたところで、俺達と鉢合わせした形だったんだけどな。
「りょーちん、さっちん今からお昼〜?」
「ああ、そのつもり…だったんですが。恭治とそ…篠原さんは何をしに?」
恭治がなにげなく尋ねた言葉に、遼がこたえた。皐はうなづくだけだ。遼は俺が総長だということを隠してくれるつもりらしい。総長と言いかけたのを言い直してくれた。
「皐の同室者の名前をききに」
頷いていた皐が一瞬止まって、パンを落とした。
いつも眠そうに見える表情も止まってしまったように、無表情になった。正直、ちょっと、怖い。
「皐、名前きくだけで他意はねぇーよ」
十夜がそう言って皐の頭を撫でると、皐はいつも通りに戻って俺にふにゃっと笑う。
癒される…ようなそうでないような…だって、さっきまでちょっと怖かったんだぞ!!
そして教室に振り返る。
そこには友人一号が!
俺さー目的があると、周りは見えないんだよなー。
よく注意されるんだ。たまに怒られるし。
解っていてもやっちまうんだよな!
「よ!」
不思議なものを見るような目で俺をみたあと、何か納得したのか、パンの袋を開ける友人一号。
「無視かよ!?」
近寄る俺。そしてついてきた連中は心なしか近いやら遠いやら解らない距離で俺達を見守る。
「いいのかよ、コウ」
「いいのよん。それより腹減った」
友人一号と飯を食おうとしていた奴が苦笑した。
「や、よくねーよ!つか、名前。なぁ!名前教えろって!」
と聞くにも関わらず、無視。おまえ、この前から…!
「いい加減ちゃんと教えろって!俺教えたじゃん!」
俺が訴えても、あいつは無視。
呑気にパンを貪っている。一緒に飯食ってる奴も、最初は困ったような顔をしていたんだけど、だんだんエキサイトする俺を前に飯に集中することにしたらしい。
そんなときだった。
なんか此処きて本当、なんで、こんな美形ばっかりなんだ。と思ってたけど、極めつけ!って感じの美形と、その前を歩く俺より小さくて…あれは可愛いというべきなんだろなぁ。可愛い男がやってきて、白手袋を投げつけた。
「今度こそ陸上部に入ってください!」
……何が起こった今?これってあれか、昨日きいた決闘とかいうやつか?
「承認する」
「え、マジで!?」
承認って、え、何、決闘すんの?と思うと同時に叫んでいた。つーか、友人一号、決闘すんの?
そのあとの展開もめまぐるしかった。
『決闘嵐』?『追いかけっこ』?友人一号すごすぎる。
「お、おもしれぇえ」
言ってしまうのは仕方ねぇだろ、おい!
決闘ってあれだろ、拳と拳の語り合い!とかだろ!
喧嘩して、縁切られそうになって此処きてるなんてのも忘れちまうくらい興奮した俺をなんとか押さえつけたのは、十夜だった。さっきまで近いような遠いようなところにいたくせに、俺が興奮していると気がついたらすぐに俺を抑えにきたのだ。
そんで、口も防がれたんだが。十夜、覚えてろ…。
むぐむぐしていると、話はまとまっていたようだ。
まぁ、それはいい。決闘も追いかけっこも面白そうではあるけれど、とにかく名前だ!
「おい、名前。いい加減、マジ教えろって!」
十夜は俺の口から手は離したが、腕は離してくれなかった。がっちり固定。なんだ、俺は猛獣かなんかか?
と十夜を振り払おうとしたとき、例の極めつけの美形がこういった。
「…とりあえず、食堂いくか…。おい、風紀、あんまりたかってんじゃねぇよ。ひとさまの迷惑考えろや。特にこのクラスじゃない二人。あと、そこの少年も、名前を聞きたいなら騒ぐんじゃなくてもっと普通のトーンで、飯食い終わってから聞かないとこいつ答えないぞ」
俺の耳にすんなり入ったその言葉に、俺は困惑する。
「は?なん?え?」
つまり、普通の声で、飯終わった後できいたなら、答えてくれると…。
あれ、十夜もこの教室入る前に同じようなことを…いっていた、よう…な?
…飯終わったあと、トーンを抑えて聞いてみるとあっさり答えてくれた。
あいつの名前は『那須晃二』。
晃二、と呼ぶことにした。
ていうか、お前が噂の那須晃二かよ!!