面白い結果


総長少年が転入してきて、俺に名前を聞いた。翌朝。
いつも通り校門からスタート。追いかけてくる生徒、待ち伏せしている生徒、罠を張っている生徒を振り切って振り切って振り切って…いたんだが、ここで問題です。
ヅラが、…ここにきてもっさり黒ヅラが奪われました。
転入生…同じようなもっさり黒ヅラを被った総長少年に。
…奪われた、というほど激しいもんじゃない。
偶然角からやってきた転入生をうまいこと避けた…のはよかったんだけど、あ、これが例の。という顔をした転入生が、うっかり喜んで勢いよくまわしたカバンに、ヅラがひっかかり、俺は勢いを殺せず、無理矢理はがれたという状況。
偶然なだけに避けづらい状態だったよ。
あたりは騒然。
俺の染めすぎで痛んだ髪はぼさぼさ。とりあえずヅラがピアスにかからなくて良かった。そしたら、ピアスが無理矢理…あー痛いなぁ。そりゃいたいわ。
「あー…まぁ、あれだ。眼鏡はそのままだし…、何でもは聞けないけどある程度は一つきくってのでどうだろう。めがねの争奪は明日から開始ということで」
静まり返ったその場に響いた俺の声に、皆がその場にひざをついた。
悔しそうというよりも、疲れきってひざをついた感じだな。
「あ、じゃあ、俺の言うこと聞いてくれんのか?」
総長少年が嬉しそうに俺を伺う。
まぁ、ルールからしたらそうなる。
「…ヅラだけだから、ある程度、な?」
ぼさぼさの髪を手で整え、苦笑する。
「つーか、すげぇ色だな!此処の風紀やっぱおかしいわー」
ま、その可笑しな風紀じゃなかったら、俺はこの学校を転入先には選ばなかっただろう。
「…で、少年、何頼みたい?」
「少年じゃねぇーって……あーうん、ま、もういっけどさー」
もういいのか。じゃあ、さっさと諦めてくれたら良かったのに…。少し思わないでもない。
「頼みなー…いまんとこねぇしなぁ。またあとでいいか?」
偶然なだけに、やってもらいたいことは無いらしい。
と、思いきや、急に少年が顔をあげてはっとした。
「食堂でいちばんたけーやつおごって!」
急におもいついたらしい。
うん、まぁそれならいいかな?結構高いけど、奨学生特典で全品半額だしな。あとは朝メニューならまだマシだろうし。
「了解。明日の朝な」
「やった…!」
たぶん少年は朝のつもりは無かったんだろうけどな。言ったもの勝ちだ。気づいて絡まれる前に緩く手を振って、俺は立ち去る。
「って、朝って…!」
少年が気づいたようだ。ま、俺はもう視界に捕らえることができない場所に行っていた。階段上ってたわけだが。少年声がでかいなー相変わらず。
…打算的と言ってくれてもいいんだぜ。
next/ 二人の変装top