教室に行くと、晃二のヅラがとれたって事と、今日の決闘で大盛り上がりだった。
俺をみてふと、変な顔をするも、俺が席に着くと『あ、今日からデビューか』という顔をされる。
俺がオタルックでないことなど、このクラスにとってはたいしたことじゃないらしい。
「ういーっす、すけちゃんそうちょー」
相変わらず、なげーよ、恭治。
「はよ」
軽く手を上げて挨拶すると、恭治がご機嫌な様子で俺を見た。
「そーちょー耐え性ないからーすぐそれになると思ったんだー」
失礼な。
「これで、けっとーとか言わるの、少なくなると思うー」
「あ、マジで?」
「まじまじ、ちょーマジィー」
ふにゃふにゃと笑う恭治の近くには、この三日間と同じように…もう、いつものようにっていっちまってもいいんじゃねぇの?…ま、そんなわけで、グリンなしゅうちゃんがいる。
そして、遅刻してこなかった俺の同室者の尚もいるわけなんだが。相変わらず俺の髪を狙っている視線がウザイし鬱陶しい。
俺が転校してきてから、この三人とつるんでいることが多い。
恭治はたまに風紀委員の仕事をしにいっていなくなるけど、授業の移動とか昼休みとかは大体このメンツと一緒だ。
放課後はしゅうちゃんは、即、寮に帰るし、尚も人の髪を触りにいってるとかでいない。
俺もさっさと部屋かえって、晩まで寝ようとするんだけど、いつも十夜とか遼につかまる。恭治はたいていそれを、やっぱりふにゃふにゃ笑いながら、着いて来る。皐はなんか部活とか言って、俺に挨拶だけしてふらっといなくなるから、学校で一緒にいることはあまりない。
これじゃあ、前の学校いたときの夜とか休日とかわんねーじゃんって思うけど、なんかちょっと安心。なんかさ、やっぱ、俺も転校とか、ダチとかできるかとか。かんきょーとかいうのとか。そういうのを不安に思ったりするわけで。
こういうの柄じゃねぇけど。
ちょっと俺がシリアスしてる間に、しゅうちゃんと恭治は話込んでいたようだ。
突然、俺に話がとんできた。
「あ、スケちゃんスケちゃん。今日、那須晃二の決闘見に行く?」
「ていうか、すけちゃんそーちょーは、俺がれんこーすることになってるよーん」
おう、見に行く!って答える前に、恭治が返事をした。
早いっつの!長ぇっつの!!つか、強制かよ!!!
「いや、まぁ、見に行くけどよ!」
考えている突っ込みが声にならないうちに、勝手に口が違う突っ込みをするのも、3日くらいで、もう普通になってきたなぁ…。
「なっちゃんの決闘は月一イベントだからー不良だからって見ないでおくとちょー損なんだからぁー」
相変わらず、家庭科室にあるみたいな長ぇサシを背中に入れたくなるような楽しそうな笑顔を見ながら、俺は頷く。
「そっかそっか、やべぇ面白そうじゃん?」
「んー。それにー、前回もスピーチだったんだけどー、勝者のコメントが『この次も見てくれるかなー!?』っていってたから、うっかり、皆『いいともー』って答えちゃったし…」
おいおい待ってくれよ。
ここの生徒ってことは、あれだろ。中学生か高校生か、教師しかいねーんだろ?
あの番組って、昼だろ。いいのか?再放送か?いや、ま、どっちにしろいいのか??
「だから、いかなければならないのです!」
びしっと敬礼をしてくれる恭治は、無駄に輝いていた。
ああ、それにつっこみさえしない、このクラスは、暖かいのか冷たいのか。
「あー…でも、あれだ。篠原は行くなら気をつけろよ」
「あ?」
尚のウザイ視線が髪から目に移った。今はウザイというより、少し真剣な視線になっていた。
「那須の決闘の時は、本当、人、集まるからな。天の総長とかいうんなら、顔知ってる奴もいるだろう?那須のパフォーマンスに興奮して馬鹿やる連中もいるし、それに乗って馬鹿やるやつらもいるから、それを巻き込みながら襲ってくるやつもいると思うからな」
尚は、このクラスにいるわりに、頭のいいことをいう。ちょっとたまについていけない。
けど、これは解る。簡単にいうと、絡まれないように気をつけろ、だ。
「俺、目立つのやべーんだ。すげー気をつけるし」
そう言って頷いた俺に、今更…という哀れんだ目を向けた友人たちに悪気なんて無かったと思う。
けど、一発ずつ拳固くらわしておいた。
なんかむかつくから。
三人とも足もなげーし。