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部屋に戻って無駄に広いリビングで転寝をしていると乱暴にドアが開かれた。
俺は、その音をきいて、眉間に皺を寄せゆっくりまぶたをひらく。
そこには見慣れた、赤、金、青、茶…あれ、銀もいるな、初めましてー。
「…おっす」
と何となく手を上げ挨拶。
銀は見かけない顔だ。そして、背がちっちゃい。さっきの少年と同じくらいって…まぁ、流れからして、少年の変装がとけた姿だよねー。まぁ、美少年。定番ね。なんて思いながら、眺める。
少年は相変わらず煩い。どうやら俺になにか言っているらしい。知らん。
「おっす、なっちゃん!」
「…寝てたのか、悪い」
「てか、てめーさっきはよくも…!」
「総長、少し、黙ったほうがいい」
最初に声をかけてきたのは茶髪でちゃらちゃらした…これまた容姿のととのった少年だ。名前を湯木恭治(ゆききょうじ)という。元気で騒がしいヤンチャな奴だ。
謝ってくれたのが、青い髪の少年で、物静かで…やっぱり美形である。名前は本宮遼(もとみやりょう)。物静かだが切れるとやばいときく。まぁ、そんなもんだよな。
文句を付けてきたのは、篠原少年を追いかけていた水城十夜(みずきとおや)。ワイルドでかっこいいが、口が悪いせいか頭悪そうな雰囲気がある。実際はそんなでもないんだがなぁ…ちなみに髪の色は金髪。根元ちょっとカラメルになってるぜ。
最後に篠原少年を黙らせようとしてくれたのは、おなじみ赤毛の同室者のさっちゃんです。
上記四名とはもれなく友人。気のいい奴らだよ。
まぁ、騒がしいのが二人ほどいるけどね。気にしない。気に留めない。
でも、転寝してたところに煩くされたら俺もさ、不機嫌になるよね。
しかもぎゃーぎゃー喚かれたら、そりゃーもう、眉間にも皺がよっちゃうね。
さっちゃんが気を使ってくれて、静かにしたほうがいいよって言ってるのにね。
「篠原少年」
「だから、少年じゃねーって!失礼だと思わないのかっ!」
思っていても正す気はないね。
ていうか篠原少年、少年だよ。正しく、普通に事実。
あと俺自分勝手で自分本位なの、わりと。
「あのね、俺はちょっといい気分で転寝してたのね。そこにぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー騒がれて、いい気分になれる人ではないわけでね」
俺の様子なんて見てないんだろうか。それとも上手いことヅラと眼鏡で色んなものが隠れてるんだろうか。
それとも俺以上に正直な人間なんだろうか。
少年はまだ、喚いている。
俺は、ソファーから立ち上がり、灰谷の傍までくると、つかまっている少年の頬を左右にひっぱる。
「ひゃにふんだ!」
灰谷以外が俺にくってかかろうとする。
一年も友人付き合いしてないけど、俺の機嫌をよみとってくれよ、解りやすく提示してんだから。
少年の頬から手を離すと、真っ先につかみかかろうとした水城を蹴り飛ばす。
わりと冷静な本宮はそこで動きを止めて、俺から一番遠かった湯木は俺の一歩手前で止まる。
俺、不機嫌ですオーラを隠しません。
そして、変装したって生活態度も、性格も、口調も、まーったく変えなかった俺は、とてもこの学校で有名人。友人達は俺が不機嫌な時どういう行動に出るか知っている。
頬を引っ張るなんて優しい行動ではないか。水城なんて蹴られてソファーにぶつかって、起き上がるのに苦労してるぞ。
「何すんだよあんた!」
水城が蹴られてソファーにぶつかってる原因になった俺に対して篠原少年は怒る。
確かに、俺は悪いことをした。
そんで、怒られるのも当然だ。
けど、篠原少年が一言、俺が気分を害したことについて謝ったっていいと思うんだけどなぁ。
まぁ、最初っから俺が騒がれて仕方ないことしてんだけど…。
ため息をついた。
俺、丸くなったなぁとか何となく思いながら、少年は無視して、水城に手を貸しにいってやる。
水城は俺を睨んでくるけれど、それももう慣れている。
「わり、八つ当たり」
俺は一言だけそう言う。
水城もわかっている。俺はそういう人間だとわかっている。
俺は隠さないから。
だから蹴られても、いつも通り。
八つ当たりされても、それすらいつも通り。
「ったく…」
文句はいうけど、もう一度殴りかかってきたりはしない。
俺が不機嫌になった理由が解っているからだ。
「ちょ、なぁ、アンタほんと、失礼じゃないか!?」
誰かが喚いている。もう、少年っていうのも面倒くさい。
まっすぐで正直な人に、ため息をつくまえに、もう、謝ってしまうのが無難だろう。
「ごめんね、俺が悪かったよ。失礼な態度とってんの、知ってた。でも、俺はとるよ、失礼な態度。知っててやってんだから。とりあえず、今までのことは謝るよ。でも、これからも俺と関わるつもりなら、失礼な態度は覚悟しておいてくれる?知っててもやるから」
堂々といっておく。
少年はどうも気に入らないらしかったが、ここで俺の性格が180度変わることはない。
他の三人が、少年に対する俺の態度に苦い顔をしたが何も言わなかった。
灰谷だけが、うんうんと頷く。
同室者なだけあって、付き合いは他の三人より長い上に、灰谷は無口だけど俺と気が合うところがある。他の三人と反応が違っても仕方ない。
そういうとこも、大好きよ、さっちゃん。
「で、総長少年をここにつれてきたってことは、アレですね。今から、何か、会議的なものでも?」
「ん」
簡潔に頷いてくれるさっちゃん。
「じゃあ、席はず」「さなくていい!!」
俺の言葉をさえぎる少年。あれ、篠原少年この会議不本意なの?
「…さなくていいの?」
尋ね返すと他の四人も頷いた。
さっちゃんはだいたい気にしないというか、そういう性格だからいいとして、他の三人は珍しい…いや、総長溺愛してたしな、総長がいったら回れ右なんだろな。
「じゃあ、いようかな」
「ん」
満足そうに頷くさっちゃん。俺を椅子にして、総長をぬいぐるみにでもするつもりだろうか。軽く3Pぽい構図だな。ていうかワガママな犬だな。その気にならないけど。躾がなっとらんって怒るべきなんだろうか。
「でも、さっちゃんが一人得っぽいので、俺はたっちのところに行ってくるであります」
無意味に敬礼して部屋から出て行く。
さっちゃんは、一瞬眉間に皺を寄せたが、ほんと一瞬。すぐにご機嫌顔。あいつ、俺以上に気分屋なんじゃないだろうか。たまに思います。