正直にいう。
この展開、予測してなかった。マジで。
早々に変装ってばれて、追いかけっこ。マジこえぇよマジ!
って走ってたら、なんか、宙に浮いてた。それもありえねぇって思ってたら、教室に連れてかれた。とりあえず意味わかんねぇけど、たすけられたならありがとうと言うべきかなって。つーか、マジ、俺の変装みたいのが実在するんだな。つか、名前呼べよ、水臭い友達だろとか思ってる間に、裏切られた。
え、皐とか…チームの特攻隊長じゃん。やべーばれるやべーって思ってたら、すでにばれてた。てか相変わらず卑怯だ、かわいいぞー。みためはかっこいい系だと思うけど。
つうか、俺の前いたチーム…天っていうんだけど。天の幹部連中はヤバイ美形集団だと思う。俺はなにもしてなかったんだけど、なんか何時の間にかモテモテ集団があつまって…もててもてて…俺なんかだれもちかよらねぇのに…く、くやしくなんかねーよ!
とにかく、皐にばれた。その前に十夜にばれた。なんなんだよ、お坊ちゃま高校とか通ってんじゃねぇーよ、不良の癖に!!
で、俺の友達第一号…まだ、名前聞いてなかった忘れてた。
に、また会えるかなーとか思いを馳せていたら、幹部連中が全員集まった。だから、お坊ちゃま高校とかかよってんじゃねぇーよ!ふざけんなし!
問題起すなよってさんざん脅されたんだよ、くそばばぁに。なのに、なんで集ってんだよありえねぇよ!
雅孝(まさたか)さん…って、ばばぁの弟なんだけど。まぁ、おじさんなわけだが。おじさんっていったら怒られる。…の、雅孝さんはまぁ、ばれてもばばぁにばれねぇよにしてくれるっつってたけど、それとこれとは別だろ、おい。
だから、俺も、逃げるべきとこは逃げとくべきなわけだ。
逃げようとする俺を捕まえたのは相変わらず可愛いけど馬鹿力な皐だった。
外見に違わず強ぇんだよ、喧嘩とかも。
「俺は何処連れてかれるんだ…」
と呟くと、皐は答えてくれた。
「部屋」
何処の?相変わらずわかんねーよ、もっとしゃべれよ皐!
マイペースだしよ!だからなのかなんなのかしらねぇけど、他のメンバーもあんまり皐のすること止めたことがない。
ま、暴走とかもしないんだけどな、皐。
「ああ、一番近いのお前の部屋だし…いいか」
そういったのは十夜。皐とは幼馴染なんだとよ。あ、十夜は副総長。てか現総長だろ。俺、十夜によろしくしてこっちきたし。これもまた、憎らしい男前だ。ワイルドっつーの?副総長だからもちろん喧嘩も強ぇし、もててもてて…なんつか、女だけでなく男も誤射?よく、兄貴あつかいされてる。そこはザマァ…いやいや、かわいそうだなと…。
そんで、俺がボーっとしてる間に豪華なホテル入って、あれよあれよでこの状態。なぁ、ここ、寮とかいう名前のホテルだろ?有り得ねぇ。
ぱっとしか挨拶できなかった寮監の誠也はすげーいいやつだったんだけど、こいつらが引っ張るからなんか話もできなかったじゃねぇか。また今度ねって手を振っていってくれた誠也はいい奴で優しい奴なんじゃないかと思う。
つか、これがホテルじゃなくて寮だと再確認させれた時は、やっぱありえねぇと思った。
もう一度いってやる。
ありえねぇ。
そんなこんなしてるうちに、十夜によって皐の部屋はだーんっとあけられた。正に、だーんって音だったと思う。つうか、蹴りあけるなよ。その前にカードキー通してたじゃん。ぜんぜん格好よくねぇよ、カードキーのせいで。
で、ドアを哀れんで、前を見た、ら……っと…なんだ、名前聞き忘れた友人じゃん!さっきはてめーやってくれやがってーと思いつつも、再会が嬉しい。名前、そう名前聞かないとな!
「…おっす」
とりあえず挨拶したって感じだった。
「ちょ、お前、さっき!つか、名前、なぁ、名前おしえてくんね?」
って、俺がいってんのに遼と恭治と十夜と皐が挨拶をかえした。つか、俺とも仲良くしろよ、友達だろ!
「総長、少し、黙ったほうがいい」
って、何気に皐が酷いこといった…つうか、まともにしゃべった!
初めて聞いたかもしれん。
「てか、名前!なー教えてくれよー!友達だろ!!」
届けこの思い!!
「篠原少年」
って、また少年呼びかい!何回呼び捨てしろっていったよ、俺。人の話聞かなさすぎだろ、あんた。
「だから、少年じゃねーって!失礼だと思わないのかっ!」
表情はぼっさぼさの髪と光る眼鏡で読めないけど、口元が不機嫌そうに笑ってる。
俺が会ってからずっとそうなんだけど、別に悪意とかそういうのはぜんぜんかんじねぇんだよな。
薄ら笑いとかでもないの。なんか、常に楽しそう。
それが、今は不機嫌そう。
なんか、あからさまなくらい不機嫌そう。
あれ?そう思えば、寝てたとかなんとか遼が言ってたか?
え、ちょっと、それは俺、まずった感じ?
「つか、あれ?ちょ、なぁ、遼!てか、遼に聞くよりも本人?なぁ、もしかして、寝て…」
そして、俺は頬を引っ張られた。
何すんだ!って言ったつもりだったけど、口が動かないから意味不明。
そこで、友人一号に飛び掛ったのは十夜だった。なんか、いつも過保護っていうの?幹部連中はいつだって俺につっかかって来る奴らに敏感すぎる。
いつも見ていた金髪が一瞬にして遠のいた。
え、十夜がソファに蹴り飛ばされた。
それでもあいつの口元は笑ったままだ。
嬉しいわけでもない、喜んでるわけでもない。無理矢理笑ってるわけでもない。嘲笑…だと思う。
ソファから起き上がれない十夜を見ていてハッとする。
「何すんだよあんた!」
いくら、族抜けたって、十夜は大事な友人だ。たとえ体育会系な縦関係のあるような場所にいたとしても、だぞ。
友達が蹴られて黙ってるのはおかしいだろ。
俺の言葉に、今度は哀れみの笑みを俺に向ける。
こんなに『笑う』って表情に種類があるなんて知らなかった。だけど、おかしいだろ。なぁ、なんで、十夜はあそこまで蹴られたんだ。十夜が先に手をだしたんでもあそこまで蹴られるのはおかしいだろ!
その後、あいつはため息をついた。
何を思ってため息つくんだ。なぁ、さっきから、あんたおかしいよ。
「わり、八つ当たり」
はぁ?なぁ、それ、おかしい。さっきからおもってることだけど、おかしいよ、あんた。
でも、なんか、周りの雰囲気もおかしい。
十夜もそれがさも当たり前のように、何も言わなければ、礼儀に煩い遼も何も言わない。
恭治と皐は、別にいつもそういうことには関心がないからいいんだ。ていうか、皐、気のせいじゃなければちょっと上機嫌だ。
いや、でも、おかしいだろ!ここは俺がびしっといってやらねば!
「ちょ、なぁ、アンタほんと、失礼じゃないか!?」
困ったようにあいつは笑う。
本当によく笑う奴だな。
「ごめんね、俺が悪かったよ。失礼な態度とってんの、知ってた。でも、俺はとるよ、失礼な態度。知っててやってんだから。とりあえず、今までのことは謝るよ。でも、これからも俺と関わるつもりなら、失礼な態度は覚悟しておいてくれる?知っててもやるから」
て、はああああ?
おま、なに、ありえねぇ!
ここは、もうしないっていうとこだろ、反省するとこだろ。ないの?そういうのないの?
ちょ、これはもう、駄目だろ!人として駄目だろ!
……何とかしなきゃ!!
なんか、ちょっと使命感みたいなの、俺の中で渦巻いてきた。こんな気持ちは初めてだ…!!
しかも堂々と宣言したよ、こいつマジで、駄目だ…!!
んで、まわりは周りで、苦笑い…つか、皐どうした、さっきから本気で上機嫌だろお前。いや、不機嫌ってあんまり見ないけど、今は鼻歌歌ってスキップしそうだ……にあわねぇ!
「で、総長少年をここにつれてきたってことは、アレですね。今から、何か、会議的なものでも?」
おっと。
当初の目的ってそんなだったの?俺、連れてこられたから知らなかったんだけど?
つか、尋問とかされるんだろか。やだなーそれは嫌だ。
「じゃあ、席はず」「さなくていい!!」
俺はあいつの言葉をさえぎった。
人がいれば、少なくとも尋問はしねぇだろ。
俺の言うことにはだいたい反対しない幹部連中は、そのあとに続いたあいつの言葉に頷いた。
え、もしかしても居ても居なくても尋問されるの?
あ、でも、友人がいたら気はまぎれる…気がする。
「じゃあ、いようかな」
「ん」
心のとーもーヨオオおお!
頷く皐。なぁ、おまえ、スキップといわずギャロップしてるだろ。似合わないけど、何その満足げな雰囲気。
「でも、さっちゃんが一人得っぽいので、俺はたっちのところに行ってくるであります」
え、またかよ!
また俺捨てるの?
って、何か言おうと思った瞬間、後ろから黒い空気が流れてきた。あれ、これ、誰が出してるの?
少しキョロキョロすると、すぐに空気が柔らかくなった。
なんだこれ、特殊な効果か何かか?もう、何が起こってもおかしくないな…