校内新聞にお名前が載って、しばらく。
俺は一回しか見たことのない人に、朝から追いかけられてます。
まぁ、朝の眼鏡争奪戦に突然の参加者!っていったらいいと思う。
すごい身体能力と頭脳で、俺、たじたじというか、俺の眼鏡とってどうすんの?と聞きたい、外部の人…というか、お客様に、なんのかな、この人。
しっかり準備運動してたから、最初っから参加するつもりだったんだろうなぁ。それにしてもこんな朝っぱらから来てもいいんですか、他校の生徒会長が。
…そう、俺は、他校の生徒会長…トモちゃんいわく、俺様生徒会長に追いかけられていた。
何が悲しくて他校の生徒会長にも追いかけられなきゃらなんのだ。
「もー何何?俺、ちょーもてもて?」
軽口たたくのも虚しいねぇ。
「…ある意味な…っ」
校舎に入り、渡り廊下の近い階段から他の生徒にまぎれるようにして現れた他校の生徒会長は、もう、ぜーはぁ言いながら、ちょう走ってます。
最初っから追いかけてきてるのに回り込むだなんて、がんばったねぇ。
しかし、俺だって甘くない。
他所様の超美形生徒会長だってお構いなし。
ひきつけておいて振り回すようにスピードを上げる。階段を二段飛ばしで上がっていく。
「…だが、チャンスは、今日しかないからな」
まぁ、階段上ったとこで誰かが待ち伏せしてるのなんてデフォルトですよ。
でもねー今日は珍しい人が、一人で。
そう、一人で、まっていらっしゃいました。
「かい、ちょう…!?」
この学園の生徒会長。高雅院 雅。まったく興味ねぇよって顔してたくせに、今更参加とか。と、強敵を前に左に避けると見せかけて、右に避けようとした…ら、更なる強敵が…!
「やっほう、弟よ」
ええ、お兄様でした。
何これ、年貢の納め時?
後ろからは振り回して遅れたはずの他所様の生徒会長が迫ってきてる。もう、追いつくとか追いつかないとか安全とか危険とかいう距離の詰め方じゃなかった。
はっきりいって、俺が倒れたら危険だと思う。
まぁ、安全面を考慮して、突然すぎる攻撃はなしってことになってるんだけどねー。階段はどうしても、危険なんだよねぇ。
ああーある程度安全確保できなきゃ蹴ったりはできないんだよネェ。
なんで踊り場だなんて不安定な場所でまってるのかねぇ。いや、だからこそ選んだんだろうけどね。
狭い、避けがたい、ルールで身動きがし辛い。
まったく、やっかいな。
そう思いながら、そのまま、兄と生徒会長を避けるために、階段側の隙間を狙う。
左側はより階段に近く、右側は遠い。
右には兄がいて、階段よりには会長。最初はフェイントで左に行くように見せかけ右にいこうとしたのだから、もう一度左にいったら、会長も振り回されてくれる…はず…。
と、思っていた俺が間違いでした。
会長はなんと、まったく身動きしてなかったんですね…。
見事、心理戦に負けた俺。
会長の伸ばした腕にうっかりつかまる。
がっちりホールドされる前に、やべ。と思って、少し無理をしました。
身を縮めてストンと足の力をぬく。
会長の腕の中に残ることなく、俺は地面に座り込むようなかたちになった。
でも、急なことだったんだよねぇ。
まぁ、逃げ切れなかったんだよねぇ。後ろから迫ってた他所様の生徒会長が上から乗っかってきてくれました☆
ぎゃー。
「協力ありがとう、チカ」
そういって俺の眼鏡を奪った生徒会長は憎らしいほどいい顔してらっしゃいました…。