一回しかみたことのない、他所様の超美形生徒会長は殿白河 伊周(トノシラカワ コレチカ)という。
一回でもみたことがあるのは、前年度の交流会…代々、お互いの高校の体育祭を交互に、代表の生徒団で訪れることになってるらしい…で、生徒会長として働いていたから。
記憶に残っていたのは、やっぱねー、一回見ると忘れられない美形だよ。いくら、飽和しそうなくらい美形やら美人やらの知り合いがいても!
顔は個性だものねぇ。
それで、うちの学校より金持ちのお坊ちゃん達が小さい時から詰め込まれた学校で、もちろん持ち上がりが多いから、一年生にして生徒会長だなんてすごいことをしていたことも、忘れなかった要因。
いやぁ、頭が下がります。
だから、今は二年生。
高校一年から生徒会長なんてやってるんだから、信頼とか実力とかあるんだと思う。
で、だ。
創立記念日で休みだった殿白河会長を巻き込んで、俺を捕まえ、眼鏡を奪った我らがかいちょーさまはこういった。
「生徒会に入って貰う」
廊下から生徒会室へ移動すると、なんだか体力とかの問題以外にも疲れ切っている殿白河会長をソファに寝かせて、生徒会長の台詞に、朝っぱらからテンションの高いトモちゃんが悶えた。
「何それ、補佐的な…!」
「いや、今度の選挙のことだ」
横で冷静につっこむ兄上さまが憎らしいです。
たっちん後でチェンメおくってやる!!
「辞退はしないことはできるけどさぁー…それ、決めるの結局生徒じゃーん」
「…お前は不特定多数の推薦によっての立候補になっている。票はかてぇし、お前なら入るだろ」
つまり、辞退しなければまぁ、生徒会には入れるんじゃない?って見込んでくれちゃってるわけね。
すげー賛辞〜。
「あー…でも、俺、生徒会とか興味ないなぁ…」
「…そういうと思って、今日、捕まえたわけだが」
「……うへぇ」
思わずそういってしまうのも、仕方ないと思いませぬか。
「生徒会に入って貰う、というよりは、辞退するな、だけでいいから…まぁ、断れないだろう?」
まぁ、辞退しないくらいだったら、眼鏡奪われたら叶えちゃう程度のお願いだよねぇ。
「俺みたいなちゃらーんぽらーんを生徒会入れてどうすんのよー…」
一度、友人に『晃二って殴ったり、振ったりしたら、軽い音しそうだよな』って言われたくらいのちゃらんぽらんぶりなのに。
「実力がある…向き不向きはあるが、お前が入ることを考えて、戸田を推薦しておいた」
ああ、だから、尚ちゃん、生徒会長推薦だったんだ…。
「せいちょかいちょーのそういう所が、優秀とかいわれちゃうんだろーねぇ」
自由奔放ってのが座右の銘な俺だけど、弱いものもあるんだよね。
尚ちゃんは、弱いもの…の、弟なんだよね。
なんというか、お兄さんにお世話になったから、弟さんにも恩を返しとかなきゃ。的な?
尚ちゃんは良くできました。といった感じのお兄さんにコンプレックスもあるけれど、それだけじゃないから、ちょっと複雑だけど、厚意にはそこそこ甘えるよって感じだね。
俺やお兄様は使えるものは何でも使う。
生徒会長も場合によっては手を抜かないことで有名。
なんだかんだ、似たもの同士だから、解っちゃうねぇ。
可哀想なのは、使われちゃった尚ちゃんだよねというね。
まぁ、もちろん、尚ちゃんが他にも使えると見込んでの抜擢だとはおもうけど。
あと、殿白河会長とか、お休みなのに山にある学校から遠くまで来たし、超疲れた、とばっちりだねっていうね。