嵐は突然に


今、俺は追いかけられている。
こっちにきてから、追いかけられることがけっこうあると思う。
此処にきてすぐ、まず、十夜に追いかけられた。
その後出会った同室者に翌日追いかけられ地に沈めた。腹に二発くらい拳入れた気がする。
そんで、風紀委員会の連中に放課後確保されるまで追いかけられたり。
とりあえず、色んなやつらに追いかけられている気がする。
前いたところでも、先公によく追いかけられていた。
だから、追いかけられるのは慣れっこだ。
…慣れっこなんだけど。
「何だコレ!!」
連日、宮原理(みやはら ことわり)だなんて変わった名前の担任教師に追いかけられていた。
うちのクラスでは、普段やる気のあまりない担任教師をミヤちゃんと呼んで、仲良くしている。
そのミヤちゃんが、俺の成績を危惧して、自分の夏休みのために俺を追いかけてくる。…そう、ミヤちゃんはミヤちゃんの夏休みのために走っていた。そういう正直なところが皆に好かれている。
けど、今日は、ミヤちゃんを罵りたい。
教室を一番最初に出て行った俺を廊下の角で待ち構えていたのは、軽くウォーミングアップも済んだって感じの、やったら男前というか、ホストとかしてたんじゃねぇの?って感じの先生だった。
白いワイシャツ、暗い灰色のスラックス。今はノーネクタイ。
あれ?ノーネクタイってこと以外は普通に先公のかっこーじゃん。
まぁ、格好のことはおいといて。
俺を見た瞬間にそいつはニコッと笑った。
ピンクなドンペリとか入りそうな笑顔だった。
けど、俺の第六感的なものが危険だと告げた。
そして、俺はそいつがいないほうの廊下へと走り出した。
スタートダッシュは俺の方が早かった。
「今から、篠原啓祐…そこの銀髪一年生を追いかける。見かけたら避けるように放送してくれ」
とか、大きな声で宣言した、そいつは、足が速かった。
香田せんせーがんばってぇー!って応援してるやつがいたが、それに文句も言えないくらい、俺は必死で走る。
そうしていると、校内放送がかかった。
『只今、数学の香田勝機(こうだ しょうき)先生が銀髪碧眼の転入生、篠原啓祐を追いかけております。 香田先生と篠原くんを見かけた方は、危険ですので充分距離をとるようにしてください』
なんだそれ!
と思っている間にも、俺がいく先々で道をあけていく人、人、人…!
ちょ、なんなのこれ!
「すまんな、宮原先生には逆らえない」
え?っと思うくらい近くから、低音のエロい声が聞こえてきたな。と思ったら、ガシッと俺の腕は掴まれた。
「堀川先生、捕まえられましたかー?」
「追い込み役、ご苦労様です。香田先生…足は?」
「本気ではないので、平気です」
背が高く、どっかの赤毛ぐらいあるんじゃねぇかな?って感じの先生に捕まえられた。
ってか、本気じゃなかったのかよ、コウダ先生とやら!!
すげーあしだな、おい!
てか、宮原先生には逆らえないってことは、ミヤちゃんの指示かい!!
で、俺はミヤちゃんを罵りたいわけだ。
くっそ、ミヤちゃんのバーカバーカ。
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