気がつけば球技大会です。
…の、前に、生徒会選挙演説です。
この学校のすごいところは、行事がひしめく様にあるため、その行事を合併しちゃったりするところにある。
一学期の球技大会は生徒会選挙と一緒に開催される。
普段は規定通りきっちり着こなしている人を探すことが難しい少しダサいと思われる制服を脱ぎ捨て、左をみても右を見てもジャージか体操服である姿で集合する中の演説というのは壮観である。
しかも、だ。
このジャージというやつが指定のワイシャツにあわせたのか、黒であるため、さらにすごいことになっている。見慣れるとたいしたことは無いが、見慣れないやつはいうだろう。
「すげーーーー!!」
うん、あの声はきっと、少年だね!
そんな中、本来なら講堂で演説するだろう生徒会役員と生徒会役員候補達は講堂のステージの隅に集まって、緊張感のない会話をしていた。
「今回会長・副会長候補って誰〜?」
「灰谷さんと那須さんだよ…って、ソレも知らなかったの…かっちゃん」
「だって、今年も書記するし、俺」
誤魔化し笑いをしたカイチくんは可愛かったけど、きーくんはそれどころじゃなかったようだ。どーんと暗い顔をした。今年も補佐としてカイチくんを支える予定らしいから、今年も補佐として選挙に出る気らしい。どーんまい。
人前であるため、トモちゃんはほぼ話さないけれど、トモちゃんも今年も会計。といった雰囲気。
さっちゃんは人前であっても俺にべったりで、もう七月だし、今日晴れてるし、室内だし、空調とかうっすら動いてるし、ファンとかも動いてるんだけど暑いしで、小さい子をしかるように、『めっ』というと、しょんぼりしながら俺から離れた。うん、かわいい。しばらくそのままにしておこうか!ちょっとぴくっと反応した腐った人が気になるが。
そんな濃い先輩に囲まれても物怖じしない後輩…というか、自分のことで手いっぱいというか。
「…何処触ってるんだ」
「なぁおのかっこいいケツ」
「今すぐ豆腐の角で頭打て。今、すぐ」
こんな狭いところで追いかけっこはできないと、地味な攻防をしている一年生達。本当にいっぱいいっぱいだよね。
まぁ、腐った人の反応は置いとくよ。もう、頑張ってるとしかいいようがないから。
たぶん、尚ちゃんとハルるんは庶務とか補佐とかになるんだと思う。
絞られちゃった候補は大体が生徒会に入る。
これはいつものことである。
校長が挨拶をしたあと、現生徒会長が挨拶を始めた。
試験明けということもあって、皆もテンションが高い。会長ステキー!という無理矢理ひねり出した高い声に、会長が親指を下に向けた。その瞬間に歓声ってのはどうなのかな。
「…それでは、来期生徒会役員立候補者の演説を始める」
会長がそう締めくくった。
俺から演説…とみせかけて、さっちゃんから演説である。
俺の傍から名残惜しげに離れるさっちゃんのステージの真ん中に行く姿は、いつも通り。ただ違うのはカンペを堂々ともっていったことだ。
演説…といっても、そんなに長いものじゃない。
この後控えている球技大会のために時間がそんなにさけないからだ。
演説が短くなってしまうため、昼休みの放送で座談会のようなものがある。
あと、候補者が好き勝手書いた紙をコピーしてありとあらゆる掲示板にはっていくという荒業までする。
あと、候補に選ばれた時点で新聞部には色々聞かれているため、号外の校内新聞も出る。…さっちゃんが迷っていたらしいけど、新聞部はちゃんとさっちゃんにもインタビューをとっていたらしい。コピーされた新聞はばっちり、朝のHRで配られた。
それらを判断材料に投票する。
らしいが、ほぼ人気投票だという話。
そりゃまぁ、ふつうに好感が持てる人に投票するだろうよ。
『ほぼ』なのは、そうでない場合もあるからだ。
思いふけっていると、会場が突然ざわついた。






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