球技大会二日目。
開会式みたいなのはなくて、ぱらぱらと各競技場所に集まって、見たり、参戦したり。
「ていうかさー…この学校やること派手というか、逆によくそんな金があるというか」
「まぁ、金はあるだろうな」
昨日活躍した連中をインタビューしてコメントをとったらしい。
今朝は校内ラジオと称して、ずっと校内放送が流れている。
そのなかでコメントが紹介されている。
『いやーそれにしても、那須くん、昨日は活躍しましたねーMVPなんじゃないですかー?』
『うっわ、めんどくさっ!昨日は兄上どのにのせられてやっちゃいましたけど、MVPとか…』
晃二のインタビューはやる気がなくなるんじゃないだろうか。と俺は思う。でも、放送しちゃうんだよな、これ…
『いやーでも、可能性大有りですよー盛り上がりましたしー』
『あー……そうだ、今日の競技で目立つ人間がいればいい話ですよね』
『あ、確かにそうですね』
『と、いうわけで。頑張ってください、今日の競技の人!』
『いやいや、もう少し具体的に』
このインタビューしてる人何を期待してるんだろう。とか思いながらも、初戦敗退で暇な俺は自販機でジュースを買った。
がこん…という音がして落ちてきた紅茶飲料を手に持ち、ストローを突き刺す。
『ああ、生徒会長とかに頼まれましたか?』
『厭らしい裏側ですが』
『まぁ…、じゃあ、全校生徒に宣言するように心込めましょうか』
なんの話だ?とストローに口をつける。うん、紅茶の風味死んでる。ただの紅茶風オレンジジュース!
『…皐、MVP、とれよ?』
「ぶふぉッ!」
「うわ、きったね!」
ちょ、鼻からちょっと出た。いてぇ!
口からは…まぁ、かなり出た。
隣にいた尚がジュースのきりを避けて後ずさった。
かけねーよ。
うう。まぁ、臭いわけじゃないから、いいか。牛乳だったら悲惨だったなぁ。でも、染みが…。
ていうか、それ、応援じゃねぇよ。命令だよって思っていたら、近くに皐がいたらしい。
皐様が走った…!?しかもなんか、歌ってなかった!?とかいう声が聞こえてきた。
皐が走ったとか…確かにあんま見ない姿だ…。何処いったんだろうなぁ。つーか歌ったの?歌いながら走ったの?なんなんだ、マジで。
それにしても、なんか、妙にいい声で囁いてなかったか?いや、言うことのわりにいい声してるけどさー晃二。言うことがあんなだから、褒めるとかヤバイ声とか思わないんだよな。
珍しく、声に合った言葉言ったってかんじ。
あ、この場合ヤバイ声になるのか?
「ま、男子校だし、かんけーねぇだろ」
って、認識はどうやら間違いなようで。
俺と同じく暇な尚と一緒に、うちのクラスで残ってるしゅうちゃんと恭治を応援すべく行った場所はえらく大変なことになっていました。
「とりあえずしゅうちゃんが先だからと思ってきたんだけどさー、すげーハードにバトってない?」
「あー…なんかさー、MVPとったら、那須晃二に褒めてもらえるとかなんとか…あの人の声、人気あっかなぁ。応援したの、灰谷皐だけなのにな」
しゅうちゃんが呆れたようにそう言った。
声にすら人気不人気がございましたか。
よく目立つやつではあるし、外見以外で人気を得ることもあるとは思うんだよな、確かに。けど、声、かぁ…。
「なんでもありなんだな」
「おー。…さて、俺はこんな中、勝ち抜いて見せますかね」
「しゅうちゃんおっとこまえー」
「ひゅー今田かっけー」
俺と尚のやる気のない応援は、しゅうちゃんの片手で収められた。
ちょっとかっこよく演出したみたいな形になってしまって微妙に恥かしかったのか、鼻の下に人差し指と中指あてて、おどけて、誤魔化していた。
最高にきまらないよな、それだけで。
「しゅうちゃんってちょっと照れ屋だよねー」
「今田は確かに、そういうところあるよな。意外と」
しゅうちゃんを見送り、俺らは激しいバレーボールを眺めた。
明日ぜってー打ち身になるよ、アレ。
つうか、普段、男子校にこんなのいていいのかなって連中が、あ、やっぱり男だったな、ごめんって謝りたくなるほどのサーブだの、アタックだのかましてたら、ほんと、びびるよな。
それと、あのジャンプ力は、何かスカウトとかくるんじゃ…。
でもそんなの関係なく、手堅く攻めていくしゅうちゃん。そう思えば昨日からMVPとかいってたなぁ。
そんなこんなで一時的に熱くなってた連中なんて関係なく、しゅうちゃんはバレーボールを制した。






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