しゅうちゃんが優勝を決めたので、今度は、しゅうちゃん、尚、俺で恭治が出ているサッカーを見に行った。
ちょうど決勝戦だったようだ。
恭治は勝ち抜いて、例の侍と対戦していた。
ばったばったと薙ぎ倒し…とかいっていたけど、別に薙ぎ倒してるわけじゃないって、今、試合を見ながら知った。
なんというか、ドリブルが巧みなんだよな。
すごい勢いで騙してる。でも、恭治はなんとか立ち向かってる。
点差はないんだけど、侍のチームがリードしてる。
「恭治がんばれー!」
「あ、すけちゃんそーちょー!」
ニコニコしながら手とか振ってるんじゃねぇよ!
恭治がそんなことしている間に、侍がゴールを決めた。だめだ、恭治に声をかけるべきじゃなかった…。
「すけちゃん駄目じゃん。恭治、そんなにスポーツマンじゃないんだから」
横からからかってくるのは、もちろんしゅうちゃんだ。
「あーそうなんだ…」
微妙な顔をして頷く俺に、しゅうちゃんは何か思い出したのかニヤニヤしながら、今度は尚に話をふった。
「そう思えば戸田ァー。戸田のスイートハニーがテニス残ってるらしいじゃぁあん?」
尚はうんともすんとも言わないで、俺と同じように微妙な顔をした。
「何が残ってるって?」
「スイートハニー」
「誰の?」
「戸田の」
尚はそのまま首を捻って見せ、そのあと緩く首を横に振った。
「心当たりがねぇ」
ムキになってかえされるより可能性がないな、渋谷!
俺は渋谷がいるだろう方向に手を合わせた後、向き直り。
「しゅうちゃんの言いたいこと解ってるくせに」
「なんのことかさっぱりだ」
とぼける尚は、再び首を振った。それでも、しゅうちゃんはニヤニヤしたままだった。
「応援いってやれよーじゃねーと渋谷、また、ベッドの中でしくしくなきだすぞー」
苦い顔をすると、尚は俺たちに何も言わず何処かへ向かった。
「戸田はあれで結構渋谷に甘いからなぁー」
じゃあ、テニスコートに向かったんだな。
「たぶん、今頃、遼さんとかと決勝戦だろー?遼さん昔、テニスやってたらしいし、けっこうヒデェ攻撃するらしいし」
「あ、なんか、遼らしい」
「渋谷も行動パターン読めネェから面白い試合になってるとはおもうんだけどな」
俺らはこっちみてようなーと、恭治と侍の試合に戻る。って、負けてんじゃん!さっきまで差がなかったのに!
「あ、きょうちゃん飽きちゃったみたい」
「えええ、恭治頑張れよ、マジでー」
恭治はいつも通りフニャフニャ笑いつつ、適当に走っている。マジで、飽きてしまったらしい。
駄目だ。こりゃ負ける。だって、侍の勢いちげぇ。
…と予想したとおり、Dクラスは決勝戦敗退。三位決定戦もしたんだけど、それは一応頑張って二位に収まった。もうちょっと集中力があればよかったのにな、恭治。
「ねーねーすけちゃんそーちょー」
「…何?」
「午前中にMVP関連以外の試合終わるらしいんだけどー」
「ああうん」
「さっちょんの試合、まだ終わってないらしいんだ〜みにいこー?」
「おまえ、もうちょっと真剣やれよ」
「えへ〜飽きちゃったし。ま、みにいこみにいこ〜」
そうして俺は、恭治に引きずられ、バスケットコートに辿り着いた。
どうでもいいけど、なんかすげー色んな試合見てる気がすんなー…。
初戦敗退なせいだけどさぁ。
辿り着いたバスケットコートは異様な熱気に包まれていた。
誰かが倒れて運ばれた、とかもあったらしいくらいの熱気だ。
会長のクラスと皐のクラスのぶつかり合い。
「あーこっからじゃ見えねぇ。二階からみようぜ、二階!」
そういって、コートが見える二階に行って下を見下ろす。
そこも人でいっぱいだったんだけど、一階よりはマシで、しかも無理矢理見やすいところをあけてもらった。というか、Dクラってだけで少々恐れられてるとこあるから、そのせいだと思う。
「おー会長のスリーポイントマシーンぷり、さすが」
皐のチームメイトが入れ損ねたボールを会長のチームメイトが奪うと、すぐに会長はある位置までいき、そのほかのチームメイトも走る。
バスケは走り回る競技だ。
サッカーとかもそうだけど、バスケはサッカーより走る距離は短い。展開の速さは驚きが多い。
会長はチームメイトからボールを貰うと綺麗なフォームでシュートを決める。
もちろん邪魔だってされてるんだけど、ついていけないくらいうまい反撃だった。
けれど、それで黙っている皐でもない。…しゃべらないけど。
何か口の端噛みながら、皐のクラスのやつにボールがわたると走り出す。
おお!派手なダンク!
「で、灰谷さん煽った張本人は此処にいないんだな」
なんだか、いつもと様子が違う渋谷をひっつけながらやってきた尚がぽつりと呟いた。
そう思えば、確かにいない気がする。
「うん、なっちゃんはこないよね〜そーゆーやつだもん」
当たり前みたいにいう。
なんか違うって思うの、俺だけ?






next/ 二人の変装top