ちゃんと放送時間は決まっている。せめて自己紹介は終わって欲しいもんだなぁ。 「はいはい、自己紹介戻るねー。次はなんか、仕切っちゃってる俺でーす。織田嘉一でーす。今年も書記でーす。高二で、趣味は…お祭り…だよね、きーくん」 「俺に聞かないで」 「ええ、双子じゃん。一心同体、一蓮托生じゃないの?」 「一緒にしないで」 「しょんぼりしょんぼりー」 双子の会話はもう、双子漫才というジャンルでいいと思うよ。 でも、そんなこと言いながら、結局カイチくんの手助けをするのがキイチくんだもんね。 見ていて癒される双子だとおもうよ、俺は。 「じゃあ、続いて俺ですね。織田喜一、高校二年生です。今回も書記補佐の予定です。趣味は」 「俺の世話をやくことでーす」 「可哀想だねぇ…」 「…かわいそー」 さっちゃん、最近俺の真似するの、マイブームなの?腐ったのが口押さえて震えてるから。あれ、悶えるの耐えてるから。 こっそりハルルンも尚ちんのとなりで『かわいそー』って真似してるから、軽くエコーしてるみたいになってるからね? 「違いますから…」 ため息つきながらそういったきーくんは、疲れていたと思うよ。 半分、本人もそうかもしれない。と思ってるんだろうね。 「きーくん洋服好きだから、ちょっとコウちゃんとニアピンなんだもん」 「そんな理由で…!」 肩をおろすきーくんは、本当にお疲れに見えました。 「次は俺ですね。高一、戸田尚。候補は生徒会補佐。庶務とそうかわらない役職…ですよね?」 「そうそう、代わらないけど。会の補佐ってことだから、役員代理とかもするんだよー」 「ちょっと面倒な役職ですね」 「尚ちん、言っちゃ駄目だろ」 正直者というか、面倒なんだと思う、本気で。 そういうところが、尚ちんの持ち味だとは思うよ。 …自己紹介だけなのに、個性ってでるよねぇ。俺がラリラリしてるのとか、よく解るし、さっちゃんが無口だけど意外と話すこととか、智ちゃんが無口に徹しないとダダ漏れになっちゃうとか。 …智ちゃんあたりは、本性知らなければあんまり伝わらないけど。 「…とにかく。趣味は、髪いじり」 はい、だいせいかーい! 尚ちゃんは本当に、髪いじりが好きだよね。色んな人追っかけまわすし。廊下を良く走っている。残念イケメンって尚ちゃんのことを言うんだと思う。 「次、俺ぇ?渋谷晴樹、なぁおと同じ年で、こーほは庶務という名の雑用〜希望はなぁおのお嫁さーん…ば。趣味はなぁおを愛することです!」 「うぜぇ」 尚ちゃんの発言が、ポツリとかじゃなくて、堂々と即答の勢いだったところが印象的でした。 さっちゃんがお隣で、しまった、晃二関連の趣味でも言っておけばよかったって顔をした気がします。 表情変わらなかったけど、雰囲気が。…こういうのも幼馴染二人のが詳しいんだよね。でも、しまったって感じ、でてるから。 「…今から、でも」 「いや、遅いからね。やめとこうね。胸しまっておこうね」 うん、当たってたみたい。 「なんか、二組カップルがいると、室内の色が変わる気がするね〜」 きーくんのその発言のせいで、一年二人が大変になったことはいうまでもない。 お陰で時間が少しオーバーしちゃって怒られちゃったんだよねぇ。 ランチもそこそこに、MVP発表。 となるのは、役員候補にとっては、放送と同じように毎年恒例。 全員が大皿にのったサンドイッチを摘むのも毎年恒例…らしいよ。 ハムとレタスとチーズのサンドイッチを執拗に狙って食べつつ、MVP発表の放送をきく。 「ちょ、那須さん、ハムのサンドイッチ一人で食わないで下さい…!」 「えー?肉厚の一番人気カツサンドとか、ぷりっぷりのえび入りクリコロサンド食ってないからよくない?」 「…肉、おいしい」 「とかいいながら、野菜サンドばかり狙ってるよね〜さっちゃん様」 座談会で打ち解けたのか、サンドイッチを食いながら和気藹々とした様子だ。 俺はサンドイッチはハムとチーズとレタスの競演が大好きだから、仕方ない。 さっちゃんも、何でも食べるんだけど、環境の問題かな?手前にあるもの食べちゃうんだよね。 さっちゃんの幼馴染は二人ともさっちゃんの世話をあれこれ焼きすぎて、小皿に色んなものをとってさっちゃんの前におくのが常だったらしいから。 今はしてないらしいけど、手前のものを食べる癖がさっちゃんには残ったらしい。 そして、今、さっちゃんの前には野菜類のサンドイッチしか置かれていない、と。 「でもーお肉、はっしー先輩が胃袋へゴーしてるし」 そう、我らがカツサンドはこっそり肉食な智ちゃんにもりもり食べられてる。 お兄様いわく、外食をしても肉を食べたがる傾向にあるらしい。しかも食べ放題。結果、焼肉になってしまうっていう。楽だとはいってたよ。 「クリコロサンドは俺のものだし」 なんだかんだと皆、偏りがある。 クリコロサンドはハルルンが食べている。 双子は双子で、デザートサンドでは?と思われる、生クリームでフルーツを挟んだサンドイッチばかり食べているし、なんだかんだ文句を言いながらツナサンドばかり食っている尚ちゃん。 「ある意味、バランスが取れている…と」 智ちゃんが呟いて、食事を終えた。 サンドイッチを口先だけでも取り合っている間に、MVP発表終わってる気がするのだけれど、誰か聞いてたかな? next/ 二人の変装top |