球技大会もおわって、見たくもない成績表をもらって、投票用紙も回収された。
なんか、結果は新学期のお楽しみなんだとよ。
始業式の後、新生徒会のイベントが何かあるとか。
本当に色んなことやる学校だなぁ。
イベントも当日までのお楽しみとかなんとか。
じゃあ、そんなこと忘れて、夏休みを楽しめとかそういうノリだよな!
そう、もう、放課後なんだ。
夏休みなんだ!
久しぶりの我が家への帰宅にワクワクが……あるわけねぇ…。
ばばぁ、俺の部屋片付けたんだった…。
と俺が、思い出した時には、おれは既に帰る準備を終わらせていた。
外泊届け出しちまったよ!
「どうしよう、尚!」
「あ?」
「俺、実家でお客様扱いかもしれねぇ…!」
俺がここにきた理由を知っている尚は…といっても、俺の身近にいるやつは皆知ってるんだけどな。…とにかく、理解してくれたようで、軽く一つ頷いて、携帯をとりだした。
尚は短縮の一番をおして、どこかに電話をかけていた。
「……あ、もしもし?セツ兄?今日休み?ああ、そっか。眠いのにワリィ。ああ、うん、あのな、この間いってた奴、今日連れて帰っていい?うん…うん…わかった。じゃあ、連れてくな?」
そして、尚は電話を切った。
ていうか、連れて行くって?
「と、いうわけだ。つれて帰るぞ、我が家に」
「誰を?」
「お前を」
「…お断り」
「できねぇぞ。ほら、さっさと来い」
って、俺の荷物を勝手に持っていかれてはついていくしかねぇ。
うえええ。
俺の髪の毛どうなっちゃうんだ。
もしかしたら、なんか奇抜な髪型にされて、三、四色にされるんじゃねぇかな。うわあああ。
「ほら、さっさと歩け。電車の時間とかあんだぞ?」
あれ?車とかじゃねぇの?
金持ちって電車に乗らないイメージあんだけど?
「電車?車じゃねぇの?」
「うちで車出して長距離が安全なのは二人くらいしかいねぇんだよ。後は未成年なのと、長距離だと寝て事故りそうだから、誰か隣に乗らなきゃなんねぇ。でも、安全な二人が忙しいから…」
「いや、運転手とか」
だって、ここ、金持ちばっかって俺はきいてたからさぁ。
けど、尚の答えは違った。
「金持ちじゃあるまい」
「え、尚金持ちじゃねぇの?」
「あんなぁ…この学校、金持ち七割だぜ?三割は普通の家。それに、生粋のおぼっちゃんってのはこの 学校じゃすくねぇの。電車もバスもつかうっつの」
転校して結構たって始めてしった事実だった。
金持ちばっかじゃねぇんだ、この学校!
しかも、金持ちは金持ちでも成金だとか芸能関係とか外国系のやつが多いんだって。たまに凄い家柄の人間もいるらしいけど、そっちは珍しいんだって。
「生粋のおぼっちゃんはアレだ。白鴬(はくおう)学園に行っちまうからな」
「なんだ、そのがっこ」
「まぁ、ここと似たようなシステムだけど、家柄がおよろしいのがいっぱいいる学校だ」
「へー…」
じゃあ、恭治みたいなのは珍しいってことだよなぁ。
あ、十夜も普通の家なのかも!だから、庶民的なんだよな!
なんか納得。
「と、いうわけで急ぐぞ」
なんだかんだいいながら、商店街を横切って、俺は結局、地元へ向かう電車にのった。
地元、一緒だもんなぁ。
特急料金は払っていないから、時間はかかる。
その間に、俺は尚の家の説明を受けた。
家族構成は、父親と兄三人に尚。母親は尚を生んだ後、亡くなったらしい。男ばかりの家なんだって。
父親はあっちへこっちへ忙しくしていて余り会うことがないらしいが、三人の兄は何かと末っ子である尚に構ってくれるため、寂しいことは一切なかったそうだ。
今日、尚の電話に出たのも三人の兄のうちの一人だとか。
「上から、傾城、蛍雪(ケイセツ)、幸直(ユキナオ)」
「へーユキナオって、俺の知り合いにもいるぜ」
十夜の部下っつーの?
とにかく、十夜のこと尊敬してるらしい。俺とはエッチな話しかしない。バカなことするなら、ユキと恭治とが一番楽しい。
「ああ、たぶん同一人物」
「は?」
「だから、そのユキナオが俺の兄貴」
世間が狭すぎねぇか?






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