面白い合宿


投票の集計って誰がやんの?
思うでしょ?
生徒会…なんだけど、何故か俺も一緒に開票してますよ。
不正とか考えないのかね?
「そっち終わったー?てつだってー」
「俺は終わった」
「晃二、早い…」
さっちゃんは早く終わらそうっていう気がないだけだと思う。俺についてきて、うっかり開票作業の手伝いをさせられているさっちゃん。
マイペースだから遅くはないけど、早くもないんだよね。
早々に自分の分を終わらせ、開票作業が一番進んでないキイチくんのお手伝いをする。
「きーくんはアレだよね、いちいち細かく見すぎ。落書きとかコメントとかみちゃったら終わらないでしょ」
「だって、コメント欄ないのに、書いちゃってるし 、面白いよ、結構」
俺はそんなことよりさっさと帰りたいんだけどなぁ。
開票しては自分の集計用紙に『正』をかいていく。 ううん。目が痛い。
「俺も終わった」
そういって、さっちゃんの手伝いにいったのは会長。
おにーさまや智ちゃんも早いタイプなんだけど、自分の分以外はやりたくないんだろうね。終わりが見え始めたらペースが落ちた。
しかもばれないように少しずつペースを落とした。
いい頃合におわらせて、ちょっとしか残ってないのを手伝う気らしい。
俺にはばれてるぞ、二人とも。
「お前ら、手ぇ抜いてんじゃねーよ」
そして、会長にもばれていました。
兄君は、いい顔で笑った後、ペースを戻しました。智ちゃんは普通に不平を言いました。
「えー…手とか抜いてないから」
「いや、抜いてる。やらないとエロ本探してやるぞ」
お兄様は自分がやってるのに、他人がサボってるのは許せないようです。
智ちゃんのエロ本…隠してあるBとかLとかつく本とか本物のエロ本を探すのは、智ちゃんの嫌がるところです。
ま、家捜しされるのは皆、いやよねぇ。
「やるます」
一気にペースアップ。
智ちゃんはこのメンツだと演じる必要が無いため、結構おしゃべりになる。
でも、テンションアップなトークはさっちゃんの前では控えめ。
さっちゃんのファンだから。という理由だ。
「よろしい」
二人の様子に、会長は頷いて、開票を早める。
ここで黙々と開票していたカイチくんが立ち上がった。
「お茶、いれてきますねー」
開票作業が終わったらしい。
そして、残りの開票作業もそう長くかからないだろうと判断したようだ。
その判断、正しい。
お茶が入るころには、開票作業も終わり、集計用紙に書かれた票数を合計している所だった。
「あ、さっちゃん圧勝。会長だねぇ」
「…副会長、…が、よかった…」
まず俺とさっちゃんの投票用紙には『役員にふさわしいか、ふさわしくないか』という欄があり、ふさわしい場合、どちらが生徒会長にふさわしいか。という欄がある。
生徒の半分以上がふさわしいの欄に丸をしていれば役員になれる。
俺もさっちゃんもふさわしいは問題なかった。
「役員になっていいか良くないかがきまったら、あとは人気の問題になってきますものね」
かっちゃんはほうじ茶を各自に出しながら苦笑する。
俺に票がなかったわけではなかったけれど、さっちゃんの人気は本当にすごいものがある。
「まぁ、推薦のあたりですでにふるい落とされてるとこあるしねぇ」
「あとの役員もそのままきまり、みたいですね」
対抗馬がいないから当然といえば当然だけど。
あとの役員はふさわしいか、ふさわしくないかを丸するだけ。
コメント欄なんかはない。
ないけれど、思い溢れてしまう人間はたくさんいる。
のこった空欄にコメントだの落書きだのをしてくれるのだ。
「選挙のやり直しとかあった年もあったらしいから、綺麗にきまったことを喜ぶべきかもしれない」
「いや、でも、俺が生徒会とか…やり直すべきじゃ」
会長は緩く首を振った。
「この生徒会にするために、MVP戦も煽ったんだぞ?やり直しなどさせない」
「そうだぞ。やり直しとかされたら、大損だからな?」
会長はやはり、次期生徒会を自分の思った形にするために動いたらしい。混成チームになったのは先生方の希望だったらしいけどね。
あと、兄上からは二割くらいもらおうかな。
すごく儲けたようだから。
「じゃあ、夏休みは引き継ぎとかで学校残るべき?」
「いや、引継ぎ合宿…のようなものをする。…夏休みのうちに自主的に集まって引き継いでくれ。といった感じだな。せっかくだから、引継ぎを理由に学外で遊ぼうか。というのが伝統になったらしい」
「あーそれで今日留まるようにいわれたわけね。残り時間で日程合わせて何処で集まるか決めるわけだ」
会長のかわりに智ちゃんがうなずいてくれました。
「そ。アドレス交換もしなきゃ連絡とれないから。というわけで、今すぐ一年生を呼び出すといいよ」
それは誰が?という前に、双子が同時に立った。
「寮内放送でお呼び出しいってきまっす!」
元気に手を上げたのはきーくん。
いきすぎた行動をしないようについていくのが、かっちゃん。
うん、いつものパターンですね。






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