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呼び出すと既に尚ちゃんはいなかった。
ハルルン曰く、金銭の問題らしい。ああ、尚ちゃん長期休暇の間、すげー働いて、学費のたしにしてるもんね。ハルルンに頼み込んでさっさと帰ったそうだ。
ハルルンは使命感に燃えていたよ。
それで、引継ぎ合宿は、何がどうしてそうなったのか…。
風紀委員長の水城さんちのお持ちになっているカフェになりました。
合宿というかアルバイト…なんだけど…。
「なんというか、好きなように使われている気がする」
「アルバイト代は弾んでくれるらしいから、俺は別に気にしないぞ、兄弟」
「いやいやいや、お兄様、合宿といいながら働かされるこの状況はどうなの、お兄様!しかも、そのカフェ、不良の溜まり場ってきいたんだけど!どうなの、お兄様!」
「今更、ビビらんだろ、あのメンツでは」
「そういう問題なんだ…」
「払いがよければそれでいい。あと、ピンはねできたらもっといい」
「本音だだもれでござるよ」
「おっと…」
ぜったいしまった!なんて思ってないよね、兄上。
そういったうえで、あわよくばピンはねしてやろうと思ってるよね。わかるよ。長い付き合いだ。
そんな俺とおにーたまは、寮から徒歩でとぼとぼと帰路についていた。
そう、俺とたっつんの実家は、寮と同じ地区内にある。
正直、寮に住んでいるのが馬鹿馬鹿しいくらいだし、どうして俺が転校などしなければならなかったのかといいたいくらいだった。
前にも言ったが理由は簡単。 父上の栄転に母上がついていったから。
俺はそのとき、ご近所のAP学院に通っていたけれど、母曰く『自由すぎて一人暮らしなんてさせる気にならない』といつか俺も一人で暮らすことになるだろうに、実家で一人暮らしをさせてくれなかったのだ。
もちろん、近辺の学校経営ではない寮に住めれば転校の必要性はなかったのだけれども、これがねーいっぱいで。
下宿なら、ご飯が出るところもあるのだけれど、それだけじゃ一人暮らしとそう代わらないといって、着いて来ないならおにーたまの通う学校に行きなさい。
とかそういわれたわけで。
そこじゃないと、びた一文も払わないって調子だったんだけど、俺は学院では特待生だったため、びた一文学校に払っていなかった。…その上、小遣いさえ払ってくれた覚えがない。
いや、中学入る前はね、一応、片親だし、負担かけたくないとかいう俺の考慮とか、俺のしたいこととか考えてAPに必死こいて勉強して、入ったわけなんだけどね。
成績維持にムキになったし、ご近所でお手伝いしてお小遣い貰ったり、やたら生徒会にはいれっていう連中相手にあれやこれやしている間に、毎日運動会みたいな状態で…。
正直、学園にいる今よりてんやわんやだったわけね、俺。
そりゃあ、体力もつくし、運動もそこそこできるようになりますよ。センスじたいはあったみたいだし。
とにかく、こうしてお兄様とトボトボ実家に帰っているのも当然といえば当然なわけだ。
「皆実家が遠くて大変ねぇ」
とはいうものの、学園の幼等部から持ち上がってるやつは大抵、地元は一緒。
俺に手を振るのも、またというのも、挨拶をするのも嫌がって、しぶしぶ帰って行ったさっちゃんも、学園の幼等部が地元にあったため、学園に通っている。もちろん、その幼馴染の会長も、水城もそうだった。
「まったくだ」
頷く兄上は、兄上の父君が我が母君と結婚するまで遠方に実家があったため、とても実感がこもっている。
「でも、そういってられるのも二日ほどだ。あとは、例のカフェで住み込みアルバイトだし」
「従業員の人に半月有給休暇与えるとか、どんだけ太っ腹なの…」
水城さんちのカフェには普段、きちんと従業員がいる。
お昼間と夜の交代制。
夜は不良の溜まり場になってしまうため、店長さんだけで回しているようだが、お昼は他にも四人ほど従業員がいるらしい。
その店長含める四人に半月の有給休暇を与え、その間働く人間を探していた水城家の家主に、会長がちょうどいいからと便乗したようだ。
有給に入る前に、そのカフェのお昼の部でこき使われしごかれ、それなりに使えるようにしてからメニューを大幅に変更し、半月ほどカフェの趣旨すら変えて開店するらしい。
普通ならありえない出来事である。
ソレが決まったあと、尚ちゃんがバイト先を決めてしまう前に、連絡をして、アルバイター尚ちゃんをキープしたのはいうまでもない。
うん、でも、俺も喫茶店とかカフェのお手伝いしたことあるよ。おかーたまはお小遣いくれなかったからね。






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