そんなこんなで、『天』の溜まり場、placeというカフェでイケメン喫茶フェアーという二週間の限定イベントをするために、俺はそのカフェにやってきた。 イケメン喫茶って何?状態。 でも、一応、店長とサブリーダーがお互いお休みをずらして仕事をしてくれるらしくて、二週間ともどちらかがいるので、いつもと同じ水準をたもって飲み食いできるようにしてくれている。 それにしたって、イケメン喫茶って。 いい男が制服をびしっと着て、給仕してくれるというのは女心をくすぐるんだそうで…。 別に何かサービスがあるわけでもない。 しいていうなら、普通のお店よりちょっとお客さんと話ができる程度。 「すみませーん、一人、自称イケメン混じってるんですがー」 自ら挙手をしてみました。 自称、イケメンです。 「いいんだよ、コウくんに求めてるのはツラじゃないから」 面と向かっていわれるとなんだかとっても微妙な気分ですが。 会長は文句なしに美形だし、おにーたまも性格悪いのでてるけど美形の類。双子も可愛いのと綺麗なの。智ちゃんは男前だよ、だまっていれば…。 新生生徒会にしても、さっちゃんは強面だけど、女の人、こういう顔嫌いじゃないだろうし、かっこいい類。ハルルンは言動と行動があんなだけど、ふわっふわの癒し系。女の子要素のない可愛さ。女の人の言うところのかっこかわいい、かな?尚ちゃんに至っては、髪の型とかああだけど、美形の一人としかいいようが。 俺だけ、分類・派手。ってどうなの? 「落ち込んでいいですか、店長」 「落ち込んでも仕事してくれるなら、いいよ」 ええ、それはもちろんですと、俺はテーブルを拭く。 さっちゃんは黙々とパンからパンの耳を包丁で落としている。 今日のお昼間のスタッフは店長、俺、さっちゃん、そして、シルバー類を磨くカイチくん。 ちなみに、さっちゃんがやっているのは今日の朝ごはんのホットサンドの準備。 またサンドイッチかーとなんとなく思う。 「しかし、二週間か…勿体無いね。儲かるし、君たちすごく使えるのに」 ええ、フェアーが始まって、実はもう、三日目です。 フェアーに入る一週間前、朝から晩までしごかれた。その間『天』はカフェ出入り禁止されてたくらい、引継ぎ合宿メンツはカフェにこもりっきり。 そして、フェアーが始まって一日目、客引きをしに行った元会長雅くんと元副会長龍哉くんのお陰で、一日目からてんやわんや。お休み予定だったスタッフをお泊まり場所から呼び出して給仕給仕。 二日目は俺とハルルンの呼び込みで突っ込み不在でボケることしばし、やっぱりお店はてんやわんや。 それで、今、三日目準備中。 「毎日てんやわんやで大変じゃないですか?」 きいたのはカイチくん。首をかしげる様子は美人だけどとても可愛らしい。やってきた女性に丁寧な態度をとっては見ほれられ、ちょっとした可愛らしい仕草をしてはこっそり騒がれている。 「うん、けど、そういうのは最初だけだしね。それに、今、夏休みだからってのもあると思うし」 確かにその通りである。 新しいものは最初、騒がれるものなのだ。 マニュアルにある台詞以外をたどたどしく話しているのを誰かがフォローに行く度、一部の女性にとても熱視線を向けられるさっちゃんがパンと具をホットサンドに挟みながら地味に頷いていた。 智ちゃんいわく、『ご同類とかだよ』と言っていた。コンセプト喫茶に行きたがる女性は結構智ちゃんのご同類が多いらしい。 「あー…まぁ、お店のファンとして残ってくれる人もいると思いますよ」 と言ったのは、やたら話がうまく進まない場合のフォローに回される、俺です。 店長のいう俺に期待しているところ、というのはトーク面です。 話をするといっても、そう長い間ではない。 けど、アルバイトなんてやったことも奴もいれば、あまり社交的じゃない奴だっている。そういうときのフォローが俺に求められているわけで。 「ありがとう。うん、コウくん、本当ありがとう。結局毎日入ってもらってるし」 そう、遺憾なくお仕事してるのはお兄様、高雅院、智ちゃん、尚ちゃん、俺、と多いものの、初日はお兄様と高雅院は呼び込みにいっていた。 智ちゃんと尚ちゃん、きーくんが仕事をしていたんだけど、お客さんをさばききれず、そして、しごかれたといえど初めてのアルバイトであるきー君のフォローにまわりきれそうになく、お呼び出しをくらいました。 二日目は俺とハルルンが呼び込みしていたけれど、お仕事をしていた、尚ちゃん、会長、さっちゃんで、やっぱり忙しくて初のバイトとさっちゃんのたどたどしい会話をフォローしきれず。さっちゃんなら俺だという方程式を一週間でたたき出していたらしく、俺はかっちゃんと呼び込みを交代してお店にいきました。 なんだろう、とってもフォロー要員。 ま、バイトのことはとりあえず置いといて。 当初の目的である引継ぎ。 それはフェアーが始まってから夜に行われています。 店長がいるうちは、夜の部は店長だけでまわしてくれるそうだから、お言葉に甘えて夜は皆で集まって引継ぎのために資料みたり、説明を受けたりしているわけだ。 といっても始終そういうことをしているわけではない。 ぶっちゃけ、生徒会室じゃないとできないことも結構あるわけで。 それは新学期にするから、今は、新生生徒会のお披露目イベントについてはなしている。 始業式は朝に集会があってそれが終わると学校は終わりなのが普通だけれど、自由参加でその後、新生生徒会のイベントが行われるのが学園の普通。 新生生徒会の意気込みみたいなものだというはなしだけれど。 去年は参加生徒で隠れ鬼だった。 あれはかなり大変だったよ。俺、すげー追いかけられた。鬼に。 もう、追いかけっこはいいですという俺の意見を聞き届けてもらって、今度は違うものをすることになった。 決まったのは、生徒会ライブ。 ちょっとまって、練習大変よ!? 何故そうなったかというと、合宿メンツ皆、音楽をかじりましたという経歴がひそかに、ひそかにあったわけですよ。 さっちゃんは言わずとしれた学園のスターだし? 生徒会長はどっかのお坊ちゃまに付き合って、ピアノなんて弾けるんです。 きーくんは吹奏楽部に所属していたとかで、サックスが吹けます。 かっちゃんは昔からヴァイオリンをしているそうです。 おにーたまはお父上に付き合ってフォークギターをお弾きになります。 智ちゃんはいっとき音楽ものにはまってたとかで、何故かベースが弾けます。 ハルルンはお金持ちのたしなみとかいって、何故かトランペットが吹けます。 尚ちゃんは、お兄ちゃんじこみのドラム。そのうえ絶対音感をお持ちのようです。 ていうかジャズでもやるの? つか、俺、何もかじってないよ? っていったら、怒られました。酷い。 next/ 二人の変装top |