俺が怖がっても時間は止まったりしない。
尚はその日のうちに帰ってきて、嬉しそうに今回のバイトは融通がきくといって、家のこともいつもよりできるからと笑った。
そんなこと言いながらも毎日毎日尚は家とバイト先を行ったりきたり。たまにすごい夜遅くに帰ってきたり。
俺はその間退屈で…なんてことはなかった。
家のことは俺とユキナオの分担作業。
俺は実家でもしたことのない家の手伝いというのをやっていた。
できないことをできないと言えば、ケイセツさんが教えてくれるのだが、これが予想とは違って懇切丁寧。これでできなければおかしいというかそういう家事に対する才能が無いんだなと思わなければいけないほどだ。
ケイセツさんいわく、上手にできなくても遅くても別に構わないんだそうで、俺が一人でうまくできるとケイセツさんは三時におやつまで用意してくれた。
これで、何故、恭治がきたがらなかったか解らなかった。
ケイセツさんは、最初の態度こそ、あんなだけど優しいしユキナオといるのも楽しい。
思い出すように帰ってきたケイジョウさんも、ユキナオが自慢するのがわかる、かっこいい人で、一緒にいても楽しい。
「恭治、なんで来たがらなかったんだろなー」
「あ。恭治さん来たがらなかったの?親父のせいじゃねぇかな」
「は?」
「カメラマンなんだけどさ。ふらっと帰ってきたと思うと、恭治さんにしつこくモデル頼んで、ふられてた」
此処に来て、尚の頭髪マニアは遺伝なのかもしれない。という、最初に思っていたことが、別な感じでヒットした。
あの、自分が見つけた人間にしつこくかかっていくかんじが遺伝したんだな、と。
「親父は、尚よりヒデェから」
俺の思考を読んだのか、三時ごろになっておやつと飲み物を用意してくれたケイセツさんは、そう付け足してくれた。
普段から居間のソファーを占拠して眠っているケイセツさんは、三時ごろになるとゆっくりおやつを用意してくれたりする。
家のことを手伝うといっても、二人がかりで、しかも飯を用意するのも夜は戸田家の兄弟が全てやってくれるし、細かいところでケイセツさんがふぉろーっていうの?とにかく、そういうことをしてくれる。
気がついたら寝てるのに、やりやすいようにしてくれているとか、ケイセツさん何者だ。
とかもおもうけど、そんなに拘束されてるわけでもない。
ただ、ケイジョウさんには、俺の話をきいた上で、ご実家にも帰りなさいねみたいなことは言われた。
まぁ、そうだよな、ババァはともかく、親父がかわいそうだ。
そんなわけで、俺はお手伝いとか言いながら、結構自由なわけだ。
そうなると溜まり場に行きたくなるの当然だ。
一週間くらい、何故か夜も出入り禁止にされてた溜まり場のカフェに行く。
カフェにいくと、中にいれた看板にイケメンがどうとかフェアーがどうとかと書かれていた。
そっか、何かやってるのか。というのだけ頭の中にいれて、俺はきく。
「あれ?皐は?」
久しぶりにきた溜まり場はほぼ全員が大集合。
でも、皐だけがいなかった。
「疲れたから寝てるって言ってたよ〜なっちゃんが」
へぇ、晃二が。と頷いてから、俺は首をかしげる。
「?なんで、晃二がでてくんだ?地元、ちげんだろ?」
「野暮なことはお聞きなさんな〜だよ、すけちゃんそーちょー」
俺が再び首をかしげていると、遼がパソコンをいじりながら苦笑した。
「恭治、そのからかいは無駄です。総長、鈍いですから」
「あー…まぁ、とにかく、さっちゃんは今、しあわせなのです、すけちゃんそーちょー」
しあわせかー。そりゃそうか、好きなんだもんな、皐は晃二が…うん?
皐は晃二がすきで、皐は疲れてて寝てて、そんで、 皐のことを晃二が答えるってことは一緒にいて。
んで、今は夜で。
うん?うん?ええ…?
俺は一気に顔が熱くなった。
「あ、今理解した〜」
うっせ!






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