カラオケ大会は突然に


『90点以下は駄目よ?高得点カラオケ大会開催です!!』
講堂の舞台上。
カラオケの機械がひとつ。
バックに映像がでっかくうつされてる。
そして何故かマイク持ってる、俺。
なんでだ。
答えは夏休みの終わり。
考えて、悩んでいる間に、お休みが終わり、学校が始まろうとしていた。
結局、皐には会えないまま、夏休み最終日、寮に帰るとそこは、戦場だった。
「くっそ、寝てる間にぶち込んだのが良くなかったか…!」
そんな悪態をついたのは生徒会長のヤツだった。一緒にバタバタしている十夜が、首を横に振る。
「そうでもしない限り、何処行ったか解らないとかなるだろ。学校休んで探すのも限度あるし、こっちにいてもらえねぇと」
なんのことかさっぱり解らなかったが、とにかく久しぶりの寮は騒がしかった。
通りがかった恭治をつかまえて、何がどうなってるかをきく。
「さっちゃんが部屋で暴れてるんだってー。夏休み中暴れてたらしんだけど、さすがに学校始まったら探しにいけないから、寮にいれとけみたいになったみたいなんだけど…」
ふーん…って、頷いてる場合ではないのでは!?
俺はとにかく恭治を引きずって、野次馬に混じって皐と晃二の部屋の前に行った。
部屋の中は酷い状態なんだろうなと思う、罵声と物が壊れる音。
どうすればいいか解らなかった。
悩んでも考えても、まだ、答えは出てなくて。
でも、選ぶものだけはたくさん用意してあった。
今、選ばなければならないわけではないのかもしれないけれど。
疲れた様子で出てきた十夜が、俺を発見して、こちらにきた。
「…総長、皐には会わないでくださいよ」
まだ、会っちゃいけないんだなというのは十夜の様子から解った。
けど、他には何かできることはないんだろうか?
俺の様子を見て思ったのか、そうしてもらおうと思って近寄ってきたのかは解らないが、十夜が数字を呟いた。
「…那須の携帯ナンバーっす。電話するかどうかは、総長の自由すけど…電話をしたのなら、確実に連れてきてください」
たくさん、選ぶものは用意してあった。
でも、今は二つだ。
電話をするか、しないか。
それは、これから、晃二と皐にどうしていきたいのかの二つでもあるような気がした。
態度を、決めるときは今なんだって。
俺は、携帯を取り出す。
もう一回、携帯番号を聞いて電話をする。
大きなお世話なんだろうなぁと思う。でも、俺はそうして無理でも無茶でも関わっていくことを選んだ。結果、掻き回しても、俺はそうするんだ。
嫌われても仕方ない。それは、たぶん、晃二が会ったときにはじめていったように、『それでもやる』ということなんだろう。
たぶん初めて、意味が解った。
電話をして、乗り気じゃない晃二を引っ張り出して、バイクをとめに行ってる間に、皐と晃二は二人で会ったらしい。
らしいというのは現場をみてないからだ。
皐を見ることなく、晃二も連れてきて以来は晃二も見ずに次の日になった。
皐は病院に行ったとか聞いたから、気になって寝れなくて、すげー寝不足で。
始業式で居眠りして、起されたと思ったらマイクを持たされた。
そして、やっと意識がはっきりしてきたのが、今だったりする。
「……ええと…」
マイクのスイッチを切って、いつも司会をしているキラキラなやつが俺に説明をしてくれた。
「風紀委員長が、今回大変だったから、喜んで生贄に捧げるとかいって連れてきてくれたんだよね!だから、今からカラオケで歌ってねー。得点が90以下なら罰ゲームだからー」
風紀委員長というと十夜だよな。
それで、今回大変だったってのは皐だよな。
で、俺に無茶振りしたのは、罰というか…ま、そんなんなワケだよな…。
考えつつもワケが解らない。うーん、まだ、頭ぼーっとしてんのかなー…。
「ま、とにかく、自信ある歌教えてよ!」






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