二人の変装

そして、俺はミニのスカートを履いている。パンツがみえそう…ていうか見えている。
青のテカテカに光る、布が薄いというか…そんな、なんか警察っぽいというか…ミニスカポリスか…男がはくもんじゃないよなとか。
てか！
男がはくもんじゃねぇよ！！
カラオケの結果、俺は79点という高いとも低いともいえない微妙な点数をたたき出し、罰ゲームをさせられてるわけなんだけど。
何！？とかやめろ！とかいう前に、押さえられて着替えさせられて…何、なんなの！な状態。
これ、あれだよな、えっちいサイトとかで売ってる服だよなぁあああああ！
しかも、下着まで、下着まで!女ものはかされそうになって、必死に抵抗した。
とりあえず、スカートからトランクス見えてるのは、もう、男のプライド守ったから、自慢したいくらいだ。ミニスカ…は、いやだけど…。
次から次へと、のせられてステージに引き上げられる奴ら。
講堂には、ちらほらと…えっちぃサイトで売ってるやつとか、宴会とかで使われるんだろうなって感じの服…。
ごつい、きもい、すね毛が腕毛が腋毛が。っていうか、違和感無く似合ってる奴もいる。どうして似合うんだ…。
酷い状態だ。
なんか、前生徒会も現生徒会も場ツナギもあって何回かカラオケしてるんだけど、前の生徒会長と副会長は90以上をはじき出して、女装をすることはない。
司会のやつが90点以下だったとき、その兄弟？双子？のヤツも巻き込まれて女装にされてしまって、司会はチアガール、巻き込まれたやつはナースを着ている。似合っているような感じがするので、何か気分は複雑。
生徒会というと尚とか渋谷もそうなんだけど、尚は今のとこギリセーフで、渋谷は…自分で、『なぁお誘惑だいさくせーん』って、巫女さんになった。尚は、その姿に微妙な顔をしただけだった。
大作戦は失敗みたいだ。
そんなことを思い出していると、今まで姿を見せなかった晃二が、ステージに上がった。
至る所に怪我。
『どーも、今期副会長のくせに遅刻してきた那須晃二でーす。いきなりマイク持たされました。歌えって言われましたが…なんか待たされてマース』
昨日病院に行ったのはどうやら皐だけじゃないらしい。
皐、どうなったんだろうな…晃二は、元気そうだけど…気のせいか上機嫌だし。
『あ、ここで、電話が繋がった…って、何？さっちゃん？ああ、はいはい…今期生徒会長の灰谷皐くんに今、繋がったようデース。はーい、さっちゃん元気？』
繋がったってなんだ？って思う前に、スピーカーから皐の声が聞こえた。
『快眠した。…五針ぬった。元気…けど、晃二、いない……寂しい』
五針縫って元気ってどうなの？どっちだろう…
皐さまああああ！いやあああ！だとか、キャーだとか聞こえる。何にキャーなんだろうか…
あと、繋がってるのしらねぇの？堂々と惚気られたような。というか、二人ともどうなってんの？元通りなの？
うおおおおおお！気になる！
『あはー。さっちゃんたら。照れちゃう。あたい、てれちゃーう。で、なんか、聞きたい曲リクエスト聞けっていわれたんだけどー。あと、生徒会長挨拶してねって』
『リクエスト…は…あとで…』
ああ、でも、元気そうだな。声聞く限りじゃ。
晃二の軽いトークについては、いつも通りだからおいておくとして、皐もなんかいつも通りだから、良かったのか悪かったのかなんて、よくわかんねーし、俺が決めることじゃねぇ気がするし。
『………』
暫く静かになった。
いや、講堂はざわざわしてたんだけど。
『…ー今期、生徒会長に選ばれました、灰谷皐です。意気込み等は急に話をふられたのでありませんが…、とりあえず、晃二に色目使ったら、コロス』
繋がってるの知ってるの？いや、知ってるんだよね、これ。
堂々としすぎというか…いいように纏まったと思っていいんだよな、たぶん…。
まわりは、ぎゃーとか、色目ねぇえわああとかいってるけどな。そこは、俺、スルー。
『やだ、俺ってば愛されてるー。ま、置いといて。さて、リクエスト…は…あれ？携帯でメール送った？あ、これ、パソコンなのねー？放送部員おつかれー』
スピーカーから音が流れ出す。
ぱーやぱーやって…何、この曲。
『あれ。さっちゃん酷い。俺、三年後に浮気したりしないよ?』
何の話だ？と思って聞いたら、納得だった。
男女のデュエットで、男が付き合って？結婚して？そのへんはわからないんだけど、三年目に浮気をする曲だった。
謝ったり、開き直ったりする男。でも、許さない女。そんな感じだったんだけど、これ、聞きたい曲だろうか…。
いや、男性パートと女性パートを使い分ける晃二は見事というか、女性パートの声が気持ち悪いよ、晃二。あちらこちらで笑いが漏れる。
楽しいから、いいか。
そして、表示された点数は…おい、なんで90を超えるんだ！
お前も女装しとけよ！
『お、90超えたねぇ』
思わず呟いた晃二に、スピーカーから重たい音がした。
『…ちっ』
誰の、誰の舌打ちだ…！おい！

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