まぁ、そんなわけで騒いできたわけですが。
帰り着いた寮の部屋にはさっちゃんがいました。
しかも俺の部屋に。
そうだね、居間はまだ片付けてないもんね。俺に会うならここが確実だね。
「病院は?」
「……退院」
押し切って帰ってきたらしい。
しばらく安静らしいけど、その安静する場所を此処にしたらしい。
「さっちゃん自分の部屋は?」
「……居間より、ひどい」
共同スペースより先に自分の部屋で暴れてしまったらしいです。
それにしても、俺の部屋かー。
「下心」
そういうことは尋ねる前に答えてくれるようです。
「下心か。そっか。でも、安静だから、添い寝くらいしかしないよ、俺は」
思わず頭をぐしゃぐしゃと撫でつつ、そういったにも関わらず、皐くんは頭を横に振った。
なんだ、ほのぼので終わらせてくれないの?
「…チャイナ」
「あ、これー?着替えるの、面倒で」
「似合ってる」
「ありがとう」
あんまり嬉しくはないけどね。
一応サービス精神を見せてその場でくるりと回って見せると、軽く手を叩いてくれた。さっちゃんも、サービス精神旺盛なのかしら。
「…ママさん」
あ、兄上と同じ意味で似合ってるという意味でした。
「そんなに、スナックのママかしら」
「ん」
相変わらず即答です。
「一応、セクシー下着にセクシーガーターなのですが、どうなのですか、皐さん」
さっちゃんが見やすいように全身が見えるように少し離れてみた。
さっちゃんは上から下まで俺を見た後、再び首を横に振りため息をついた。
「晃二、残念」
いや、自分で言っておいてもあれですが。
色眼鏡とかで、可愛いとか美人とか色っぽいとかないんですかね。まぁ、明らかに女装!ですがねぇ。
あと、さっちゃんが俺に求めてる色っぽさはこういう路線ではないと思うし。
「会長が」
「ん」
「真っ白なドレス着ていき遅れたら、さっちゃんが娶ってくれるっていってたんだけど」
眉間に皺を寄せ、首をかしげたさっちゃんに、補足説明をする。たぶん、いきおくれる理由と、さっちゃんが娶ってくれる話が噛み合わないんだろう。
「結婚する前に白いドレスを着ると婚期が遅くなるという話があってね。まぁ、普通女の子がする話だから、馴染みないと思うけど。それで、白いドレスが、コレ着る前に候補としてあったわけだけど」
「晃二、白…似合わない」
はっきり言っちゃうよね、さっちゃん。いや、確かに白主体の洋服はにあいませんが。
「うん、ね。そこはおいといて。もしそれをきて、いき遅れたら責任取ってくれるのっていったら、会長がさっちゃんが取ってくれるんじゃないかって」
「ふうん」
あれ?興味ないの?
って、思ってたら、頷いたあとに、またまた首を横に振った。
責任とってくれないんだ。晃二、寂しい!
「俺、じゃなくて…」
やれやれ寂しいな、切ないなと小声で文句を言って、洋服を箪笥から取り出していると、さっちゃんは、文句を気にしてか、それとも言っておきたいからか、こういった。
「晃二が…俺を…所有、すれば…いい」
「嫁とかじゃなくて、物なの?」
恋人じゃなくて愛人だったことといい、謙虚なのか、欲張りなのか、たまにさっちゃんは解らない。
けど、俺から離れる選択肢はないようだ。
「物で、いい」
俺は今度こそ、小声ではなく、さっちゃんに向けて言ってやった。
「寂しいなぁ、切ないなぁ」
「…確信、が、ない」
ま、さんざん遊んで、さんざん振り回して、更に気まぐれに手にしたんだから、当然といえば当然の反応。信じてくれとかいうつもりもないから、俺の反応は軽いものだ。
「そっか」
深く追求しないのはいつものことだ。
でも、俺もさすがに『ほしい』と思ったからには、違うわけで。
「じゃあ、確信持ったらそれとなく教えてくれる?」
それをいうだけで、さっちゃんが柔らかく笑う。
嬉しそうね、ちょっと意地悪したくなるよ。



さっちゃんとそれとなくいちゃいちゃ添い寝した、翌日。
夜の営みはしてないんだけど、さっちゃんが、お昼間寝て、夜寝れないといって寝かせてくれませんで、寝不足。
目の下にクマ…はまだできてない。
いつも通りの学校、いつも通りのクラス。
たまに、『よ、副大統領!』とかいわれたりしたけど、気にしないから、やっぱりいつも通り。
隣の席でイヤホンつっこんでぼーっとしてる東海林君は、挨拶しても返事しないから、後ろから軽く殴ったりもしたけれど。
「って」
振り返った東海林くんの後ろには誰もいないというミステリー。
「……那須」
「え、俺じゃないし」
「いや、お前しかいない」
「えーなんでよ」
「こういうことすんのはお前くらいしかいない」
そりゃあ大した信頼で。
そうやって東海林君とじゃれていると、さっちゃんが…くるわけがない。暫くは安静だからねぇ。
その代わりにやってきたのは、高雅院雅元会長さまでした。






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