「今日、放課後集会だ」
「あ、わざわざすんません」
「まったくだ。お前といい、皐といい、マイペースすぎる」
ええ、昨日、着替えるのも面倒でチャイナで帰った俺ですが、ゲスト扱いだったので、さっさと帰らせてもらったわけです。
さっちゃんはさっちゃんで、なにか会長に聞いていたらしかったんだけど、忘れた。と言ってました。
まぁ、高雅院氏も律儀な性格なので、連絡をくれると思っていましたが、まさかここまでいらっしゃるとは…。
「メールとかでよかったんだけど…」
「ああ…せっかくだから、直接釘を刺そうと思って」
「はぁ」
「サボるなよ」
さぼりませんとも。
と、頷いておく。
会長がひらりと手を振って退場したときは、何故か教室中ため息の嵐。
何やってもかっこいい人だというのが、教室での一致した意見らしい。結構あの人あれで、世話焼きだよ?とはいえない俺です。
とりあえず机にファイルを出してから、机の中に入れてある白紙のルーズリーフを取り出そうと机の中に手を入れたんだけど、俺の机、こんなにみっちりものが入ってたっけ?
屈んで中を見て、びっくりデス。
色とりどりの手紙やら紙やらが詰っておりました。
「…これは、ファンレターですか?」
答えはわかっていたけれど、なんとなく東海林君にきいたところ、東海林君は軽く首を振ってくれた。
「いいえ、嫌がらせです。…たぶん」
昨日もさっちゃん全開だったもんね!
しかも、さっちゃんがケガして病院いったの俺のせいだってばれてるもんね!
ソレくらい知ってるよ、すげー廊下でコソコソはなしてたからな。
「まぁ、許容範囲内ですがね」
カバンから軍手を出して手紙開封とか、用意周到といってくれ。
手紙はやっぱり嫌がらせの嵐。
やることが小さいし、たいしたことないのは、俺の一年間の賜物というか。
半分、ノリみたいなのでやってるんだよな、コレ。知ってる。
だから、クラスの連中もあーあ。とかバッカだねぇとかそんな反応。
俺は開封して中身をそれとなく見ながら、今日も平和だななんてしみじみ思ってしまったわけで。
あー…放課後面倒くさい…。
釘刺されちゃってるし、行くけどね。



放課後の集会は、体育祭についてでした。
体育祭というと、白鴬学園の代表団がくるんじゃなかったかな。
とか思ってると、高雅院元会長が、いつぞやに俺を捕まえてくれた殿白河会長となにやらあと2人の目立つ白の学ラン…なのか、あれは…を着た奴らをつれてやってきました。
「体育祭は一応、前期の生徒会…といっても、俺とタツくらいしか出て行っていないが。…まぁ、手伝うことになっている」
おやまぁ。じゃあ、半分くらいはまだ役員ということか。大変だなぁ、高雅院も。
「…紹介する。こちらが、白鴬の殿白河会長。その後ろが、会計の古賀くん。隣は、体育祭応援団、実行委員の春日井くん」
どうやら、三人とは顔見知りらしい高雅院は、集まった現生徒会長以外に三人を紹介してくれた。 いやいや、それにしても、いかにも白鴬な人選というか。
きらびやかだなぁ。これは揃うと相当だろう。
うちも結構美形が多い学校だけれど、白鴬ほどじゃない。うちの美形で飛びぬけてるのは、元生徒会長くらいであって、白鴬に比べちゃうと、あとは見劣りしちゃうのが現実。
あっちでは、顔面レベル低いって馬鹿にされてるらしいんだけどね。
でも正直、学園では白鴬のこと煌びやか華族ってよんでるんだよね。どっちもどっちなかんじ。
そして、ご近所のAP学院は学園のことをお隣さんといい、白鴬のことを極楽鳥という。
ちなみに、学園は学院のこと変人の集まりっていってるんだけどね。
ま、あそこは変人の坩堝だ。通ってる奴らも自分のことは棚にあげて、学院は変人ばっかだよなっていってる。
まぁ、みんな白鴬の認識は、『煌びやか』ってことなんだけどね。
白ランもどきでこられちゃ、確かに煌びやかっていいたくもなるわな。
白い制服なんて漫画の世界だもんねぇ。
黒いワイシャツもかわりないっちゃ変わりない気もするけど。
「…今期、生徒会副会長、那須晃二です。右から順に、書記、会計、会計補佐で、橋上智樹、織田嘉一、喜一です。会長は、今現在、体調不良のためお休みなので、副会長である俺からの挨拶で、すみません」
そんなこと考えていてもそつなく挨拶はするよ。
「いや、構わない。先ほど高雅院前会長が紹介されたとおりだ。よろしく頼む」
握手を求められました。
さりげなく出された手が、すごく好印象。
煌びやかなだけじゃないんだなーとか感心して、顔に笑顔をのせると手を握る。
「こちらこそ、よろしくお願いします…と、まぁ、堅いのはここまでにして。殿白河会長、追いかけっこぶり」
堅苦しい挨拶をしたあと、ぎゅっと手を強く握ると、殿白河会長はにやりと笑って更に強く握ってくる。
「まったく…あのときは走り疲れたぞ?」
「え、何なに〜?トノ会長、知り合いなの?ちょ、紹介して〜!そんで、美容院教えてもらって〜!」
会計の古賀くんは、絵に描いたようにチャラチャラしてる。
どっかの風紀委員に似た人種かなとおもったけど、どっかの風紀委員はもうちょっとぐにゃぐにゃだなぁ。
「紹介されなくても、仲良くなっちゃうヨ。髪は自分で染めてるんだけど、髪きってるのは学園生ね」
ま、尚ちゃんのことですが。
昔はねー、ケイさんに切ってもらってたんだけど、あの人もしょっちゅうこっちにきたりはしないから。
「自分で染めてそれ?うわー…後でメーカー教えて〜!」
とりあえず頷いておく。
そして、本題に戻る。
「今日は…顔見せだけってワケにもいかないか、白鴬遠いしねぇ…」
何せ白鴬はど田舎の山奥にある。
俺も去年体育祭の応援のお手伝いに行ってたんだけど、何かもう、県立とかの青少年なんたらセンターとか少年なんたらの家とかそういうかんじの立地。
今からオリエンテーションはじまるの?
っていう感じに、敷地内に森とかあるからね。意味が解らない。
うちの学校もでかいし、寮もでかいんだけど。
あんな華美な装飾はしてない。
寮だって、確かに広いけど、なんというか、うちの寮は外観が豪華なホテル。中身はファミリータイプデザイナーズマンション。だから、ちょっと不便なところがある。
外観がホテルで、中身がデザイナーズなのは、OBが好きなように改装したかららしいよ。
それに対して、白鴬。
中身も高級ホテル。
受付は高層階。もちろん高層階からでおとまりいただけます。のホテルぐらいの綺麗さ。
廊下に絨毯とかだしね。怖い。
マーライオンが大浴場にいたりとか、ロビーと思しきとこに噴水あったりとか。
マイナスイオンどころの話じゃない。
でも、ところどころ新しくしたんだろうに修繕したところを見かけるあたりが、あ、男子高校生住んでるなってかんじだったなぁ。
なんで寮まで知ってんの?って話ですが、泊りがけで数人先行して行ってたわけですよ。
それに俺もまじってたワケですよ。
ううん…あのときもこき使われた…。
そんな記憶しか、体育祭のイメージと白鴬のイメージがないんだよねぇ。
競技なんかは例年通りだろうし、変わってるのは、この交流目的の応援くらいなんだよね。
だから、体育祭には激励の意味を込めて応援をしてくれる演目があるんだけど、それにお礼を返すという演目がある。
交互で体育祭にいくことになってるんだけど、今年は白鴬がこちらに応援にくることになっているわけで。
それの打ち合わせとか、確認とか色々で、何回か応援しにくるほうの学校の人が、応援されるほうに来る。
で、今、白鴬の代表としてきてくれてるわけだ。
さっと、プログラムの確認と、あとは…そうだな、どれくらいの規模でくるか。とかそういう打ち合わせしないとね。
って、わけで、生徒会に入ってすぐ、大きな仕事。
なんだかんだ、生徒会のツートップが手伝いとかしてたけど、前期生徒会にいたわけじゃない二人だから、ちょっと不安だが。
やってやりますか。
目にものみせてやる。






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