転校してきて結構時間がたったから、俺も何となくわかるようになってきた。
アレだよな、この学校って、アレ。ほら、アレだって…。
そう、行事やイベントごとには力を入れすぎなくらい入れます!
ってやつ。
そんで、体育の授業さぼりもせず、いつも力の入れ方違うんじゃないの?ってやつが結構いたんだけど。
ソレが何故なのか。ってのが今、解った。
「体育祭で、お礼?」
「そー。白鴬学園の生徒がね、応援しにきてくれるから、そのお礼に何かやるんだよ〜」
その『何か』ってのは、体育でいい成績収めた奴がだいたい選抜されるらしい。
「学園内の体育の成績がいい奴なんだが、風紀と生徒会は毎回強制参加だし、そうなると風紀にはだいたい不良の頭とか目立つやついたりするから、我がDクラもやたら張り切りやがるんだよ」
お祭り好きも多い、この学校は、体育祭の盛り上がりも異常なんだそうだ。去年など、やたらとすごむDクラスの連中になんとも可愛らしい顔をした生徒が放送禁止用語を吐き散らし、一部をずーんと重い気持ちにさせたらしい。…一部にはとても歓迎されたとか。
「やっぱ、体育祭も晃二の伝説とかあんの?」
何か目立つイベントごとは常に、晃二の伝説がある。決闘のこともそうだし、皐月祭も伝説の決闘をしたとして有名だ。
今年は今年でいきなり歌うし。
「去年は、出られる種目全部に出さされてたよ。出てないときは係員とかしてたーいそがしーよね、コウちゃん」
恭治が楽しそうに言った。
確かに何かと話題になる晃二は、イベントごとがなければ存在感がないかのように静かだけれども、イベントごとが近づくと、何かといえば名前があがる。そして、よく姿を見るようになる。
「今年は副会チョーだし?たぶん、白組総大将になるんじゃないかなー」
毎年、赤、白、青に分かれ、赤は生徒会長、白は副会長、青は風紀委員長が総大将になり、戦うらしい。
一応ソレは、夏休み前の体育の授業できいた。
競技の練習は二学期が始まってから、体育の授業中、熱が入っていれば授業時間以外の時間をつかって練習している。
例の『何か』をやる連中は、夏休みから練習を重ねているらしい。体育祭も大変だ。
「で、何で体育祭の話と文化祭の話が、一緒にやってくるんだよ?」
「あー…時間がたりないんだってー。てわけで、総長パン喰い競争と、きゃッ、どき!男だらけの喫茶店。ポロリ無し。に名前書いて、票いれてきたからー、勝手に」
「勝手にかよ!」
一年の出られる競技は、三色対抗リレー、綱引き、パン喰い競争、竹取物語、120メートル走。
三色対抗リレーは足が速い奴らが選ばれるので、出たいから出る。という競技ではない。
綱引き、パン喰い競争、竹取物語は出る人数が決まっていて、出たい奴が出る仕組み。
120メートル走は一年全員強制参加である。
…竹取物語ってなんか、体育祭だろ?みたいな名前の競技が出てるけど、これこそ、一年で一番恐ろしい競技で、一番盛り上がる競技…らしい。
確かに、練習が始まってやってはみたが、あれは熱い競技かもなぁ。
競技名どおり、竹をとりに行くだけの競技なのだ。
これが激しい奪い合いになる。竹はたくさんあって、長さが違う。それによって点数が決まっていて、長いものは点数が高い。
それで、合計点数の高い方が勝ち。
で、何人かで奪い合うわけなんだけど。この前、恭治が中ぐらいの竹を一人でカラカラと自分の陣地に持っていったときは、憎らしいくらいだった。なんで、みんな気がつかなかったんだ!
そんな競技が竹取物語。
『きゃッ!どき!男だらけの喫茶店。ポロリ無し』…は、文化祭でやる出し物らしい。なに、その、むさっくるしそうなの…。いや、男しかいないから仕方ないけど、なに、そのむさっくるしそうなの…。
と思っていたのに、恭治の中では結構一押しらしい。たぶん、『おもしろそうだから』とかいう理由で。
そして、何故か文化祭は『きゃッ!どき!男だらけの喫茶店。ポロリ無し』に決まった。