「と、いうわけだ」
そうだな、この一言に尽きるんじゃねぇかな。
ありえねぇ。
不良が風紀委員だと?
しかも、それがお前らだと?
しかも、皐は学園で一番の有名人だと?
さらに、生徒会はアイドルだと?
つーか、友人一号もかなりの有名人だと?
そんで、有名人に近づくと目立つ…のは仕方ないとして、そうするとそいつらの親衛隊とやらから決闘を申し込まれる??
有り得ねぇ上にわけわかんねぇ!
「決闘?」
「まごーことなき決闘だよー。白い手袋まで用意するんだから!」
マジで?投げるのか?それを投げるのか?おい、なんなんだこの学園は!
「総長、一年前までなら制裁という名の陰湿ないじめだったんだから、マシなほうですよ」
遼までおかしなことを言い始める。
制裁とかいうのもおかしいけど、決闘があるのもどうなんだそれ?
「決闘は仕掛けてきた相手が得意なことで勝負になります。勝ち目は薄い。負けた場合は、公式でバツゲームと称された微妙な罰が用意されています…で、それが学業だったら大体はその教科の課題なんですが、途方もない量になります」
「決闘はねぇー去年の生徒会長親衛隊隊長が、やり始めたことでー。それに学校側と生徒会側が便乗したことで、普通のことになっちゃったのねー。原則として、あき時間…ほとんど放課後なんだけどーにすること、ってことになってて、決闘が行われるまでの間、卑怯な手を使わないように警護だのルールだのがあって、決闘終わったら生徒のいらいらもかいしょー。負けたら決闘を申し込んだ側のいいぶんをある一定期間聞かなきゃなんないの」
「勝てば問題はないです。それだけの実力があれば認めざるを得ないですから」
「この決闘っていうのが、生徒会に申請しないと決闘に使う手袋がもらえないとかいうせいか、みみっちぃことには使われねぇんだよな。そこんとこも親衛隊隊長が仕切ってるらしいし」
なかなか面倒な学園じゃねぇか…。
俺、勉強できないからぜってー無理。意味解らん。
ていうか、雅孝さんなんで、そのこと教えてくれなかったの?入ったからには出さないよっていってたけど、まさか、俺に勉強させたかったわけじゃないよね?ね?会うたびにもうちょっと勉強しようねっていってたけど、まさかだよね?
あああああああああ!
俺はぜってぇ有名人にはちかよらねぇ!
「と、いうわけで総長には頑張ってもらわねぇーと」
「は!?なんだそれ?おい、まて」
「そーちょーから離れるとかマジ無理だしぃ」
無理じゃねぇよ!我慢しろよ!勉強なんて鳥肌たつわ!マジで!
「総長」
ちょ、十夜も遼も恭治もこんなときに限って皐を前に出すな!殴れもしねぇよ!
あんな、捨てられた犬みたいな目で見られたら、俺は頷かなきゃなんなくなんだろうが馬鹿ッ!
「いーやーだぁあああ!」
そういって逃げた俺はけして悪くない!ああ、悪くないさ!
無我夢中で走る走る、俺走る。
今日はここきてから走ってばっかだ。後ろからは…どうやら追いかけてきていない。
あ、やべ、俺今ヅラと眼鏡してなくね?
と思った瞬間に誰かとぶつかった。
ゴンッ
ごろごろごろ…
ぶちまけるペットボトルと500mlパック。
しりもちをつく、俺と…なんかキラキラしてる二人組み。
何この二人、すげーキラキラしてるよ、有り得ねぇよ。この学園美形しかいないんじゃねぇの?
「わり…じゃない、ごめんなさ…やっぱわり?」
変装してるときは一応、こう、目立たないように口が悪いのも俺的に直してんだけど、今はそう思えば変装してなかった。
美形の二人組みは俺を見て顔を見合わせた。
タイミングがウマイ具合合ってるぜ、お二人さんよぉ。
「もしかして、あんた、転入生?」
いったのは、ちらばった飲み物も拾わず俺を見つめていたうっすい茶髪のやつ。男でも可愛い奴っているんだな、びっくりした。俺、思わずガン見したわ。
「そんな、橋上のいうことがいちいち当てはまるわけが…」
「そうだぞ」
あ、やべ。素直に言っちまった。ここはしらばっくれるべきとこだった。俺、目立ちたくないのになんで美形とぶつかってんの?なんで変装してないの?なんで、ここでふつうにいっちゃってるわけ?
「…あてはまるんだ…」
俺と可愛い奴の隣で飲み物を拾い集めていたもう一人の同じような茶髪の美形が唖然として、拾った飲み物をまた落とした。
なに?なんなんださっきから?
「わっ。まーじでー!?これはお祭り騒ぎな、よっかん〜♪」
「ええ?勘弁してよ、かっちゃん。また統制とるの大変だって知ってんでしょ?」
「えー?じゃあ、ともちゃんに逆らえるの、きーちゃん」
「……無理です」
なにやら二人の話はまとまったらしい。
とりあえず、俺はさっきから床に落ちてる飲み物を拾う。
「あ、すみません、拾ってもらっちゃって」
さっきから、腰の低い美形だなぁ。ここきてはじめてのタイプ。美形じゃなけりゃお友達になりたかった。
美形はあれだ。目立つし、友達なんかになったらさっきいってた親衛隊とかいうのに決闘を申し込まれるんだよな。
無理無理。早食いとかならいいんだけど。俺大食いとかも無理だしよ。
しばらく腰の低い美形と飲み物を拾う。
拾い終わると、美形二人でお礼を言ってくれた。
「や、こっちこそ、スミマセン」
ぶつかったのは多分俺だしね!!
可愛いほうがまったねーと手を振る。
またはない!
腰の低いほうは呆れ顔で苦笑。俺にもう一度会釈する。
本当に腰が低い。なんかもう、癒された。
そして俺はとりあえず自室へ向かうのであった。