[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。







昼休憩終わって少し。
はくおう学園ってとこの激励だかなんだかが始まる。
先頭になんかすげー美形…この学校も顔でえらんでんじゃねぇの?って思ってたけど、このはくおう学園ってとこの集団には負ける感じだ。とにかく、美形の集団の中でも一番美形なやつが先頭に立って、黒い長ランを翻す。
長ランとか短ランってさー、やっぱ一度はやってみたいとおもうんだよなー。やってたけど。前の高校で長ランやってたけど。
でも、俺が着ると長ランにあわなくて、総長は短ランのがいいっすよってよく言われてた。
ていうかいつの時代っすか、普段はきないでしょ、それ。って言われてた。うう…ダメなのか?
「我らの親しき友の招待に感謝を示して」
すげー美形の奴が一声かけると、美形集団は感謝を示して!と一声上げ、いっせいに動く。
三三七拍子で動くそれは、まったくずれない。
黒い学ラン、白い手袋、白い鉢巻という応援団といったスタイルが、それをより良く見せているようだった。
このあと、敬意と応援、各組応援をしたあと、その一番美形がふと何かを見て、笑ったように見えた。
満面というわけじゃなかった。視線だけが、不意に嬉しそうに笑った…ようにみえた。実際のところは俺は良く解らない。
なんとなく視線の先を辿ったけれど、その先は見当たらなかった。
なんだか義務というか、機械的にも見えたその美形がすごく、すごく、近くにいるように思えた。気のせいだろうけど。
「あー!伊周笑った!!」
すげえ、大声で近くから誰かが叫んだ。
あれってやっぱ笑ってたのか…てかよくわかったな、そんなことつか…笑うだろ、人間だから。そんな、珍獣みたいな言い方。
と思って、声がした方を見て、俺は声が出なかった。
なんか、すごく、見慣れた格好の奴が…いる…!
衝撃だった。
もさっとしたヅラ。
何処で売ってるかわかんねぇ便底の眼鏡。
3日で消えた俺そのもの。
気のせいだと思うけど背丈も似てた。
うわああ、俺もあんなだったのか。
近くにいた誰かが困ったようにそいつを引っ張った。
「んだよ、俺といるときちっとも笑わないんだぜ!」
お前のこと嫌いなんじゃねぇの。なんとなく思いながら、耳に入ってくる大声に不快感を覚える。
って、俺も、『ちょとつもーしん』してるときはあんななんだよなぁ、たぶん…うわああ、やばい、俺やばい。これは、かなり、やばい。
何処か隠れたい。
俺がそんな思いで項垂れたせいなのか、動きがあったせいなのか。
そいつは俺に気がついた。
近づいてきて、キラキラした目をしてるんだろうと思う…眼鏡でわからない…が俺にこういった。
「あんた、綺麗な目してんな!」
「ちょ、いいかげんにしなよ」
誰かがなんとかそいつを納めようと引っ張る手をさらに強めた。
「なぁ、名前なんてんだ!あ、俺、コウキ!佐伯光輝!」
ぼーっとしていると、そいつは勝手に自己紹介を始めた。
ああ、うん、身に覚えアル…。ちょ、マジ、何処か隠れたい。
「なぁ、名前は!」
「彼は、タナカヨシヒサだよ、あんだすたーん?」
いや、俺、タナカヨシヒサじゃねぇよ。といえないくらい、俺は身動き取れない状態だった。自分がこれと同じことしてたんだよなぁ…と思うと、ほんとに、凹んだ。
なんで、あんなことやってたんだ。マジで、晃二ごめん。
俺をタナカにしてくれたシュウちゃんはにこにこしながら、サエキコウキの相手をつづけた。
「君、白鴬の子だよね?いいの?みんな帰ってるよ、自分の席に」
「わ、マジィ!勝手に出てきたんだよ!」
「はは。そっか、早く戻ったほうがイイヨ」
シュウちゃんは心なしか、いつもと調子が違う。
にこにこと手を振って、見送りつつ聞かれた名前には『スズキトモノリだよ』と答えていた。
どうでもいいけど、良くそんな名前でてきたなぁ。
「シュウちゃん、サンキュ」
「おーいいってことよ。今度A定な」
ちゃっかりしてるが、マジ助かった。
「おけ。それにしても…なんか、もう、ごめんなさい」
「いやいや、すけちゃんはあそこまでじゃないし?イノシシになってるときのみだから」
「でも…うん、頑張る」
「オケ。がんば」
軽く、ポンと肩を叩かれた。
シュウちゃんありがとう。なんだかんだ、いい奴だよ、おまえ、本当。
どっかで誰かが、またなー!とか言ってる気がするけど、気にしない!
いや、もう、本当すみません…。






next/ 二人の変装top