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「聞いてよ、新、情、報!」
なんかこう…黒いぴらぴらした全身黒尽くめのドレスっていうの?ロングのスカートは男らしい足をかくしてて、肩がはってるのも誤魔化されてる。
身長高めな美女がやってきた。
「………何だ?」
たっぷり間を空けて…その姿に溜息をついた挙句、抱きつかれ、心底落ち込んだ様子で聞いたのは、尚だった。
何処からか聞こえた口笛に、美女は手を振って笑った。
「えへーえへー。1B外部協力、ゴシック喫茶よろしく~」
美女は間違いなく、渋谷だった。
渋谷化けたなぁと感心したのは、シュウちゃんで、ロングスカートを捲ろうとして渋谷にダメダメといわれたのは恭治だった。
いや、それ捲ったって野郎のパンツしか見られないぞ。って思ったが、俺は何も言わなかった。
「で?」
そんなことは聞いちゃいないと尚は話を促して、渋谷からじりじりと離れようとしていた。
それを引き寄せて、渋谷は続けた。
「あ、そーそ。あのねー二年のAクラ!すっごい厳重体制で、何やるかまったく漏らさないんだってー」
「あー…」
生徒会に入ってるからどのクラスが何をやるかしっているだろう尚と、風紀委員である恭治も、納得したように頷いた。
俺とシュウちゃんはそんなに秘密にされてる出し物ってなんだ?と首をかしげた。
「で、見に行ったんだけどーすごかったよ!人だかりが!」
「あは。すごかったのそこなんだー?」
「それの何処が新情報なんだ?」
「へへへ、シューちゃんとシノンにはしんじょーほーじゃない。…と、いうお題目で、なぁおに会いにきたのだ!大好き!」
うん、なんとなく解ってた…気がする。
それにしても、また秘密か…たぶん教えてくれないんだろうな。何かシークレットイベントとかなんとかいってたしなぁ。
「あれ?食いつき悪い」
渋谷が珍しくついでに俺たちの反応を見ていたようだ。
「だって、どうせ教えてくれないんだろ?なら、当日びっくりしようかと思って」
ってのが俺の意見。
シュウちゃんの方は、どうなのか解らないけれど、俺の意見に頷いているから、それもあるって感じなのかも。
「二年のAクラっつーと、『那須晃二』だろ?ただじゃ転ばないし、起きない人だよな、あの人…」
最近軽く付き合いがあるらしくて、シュウちゃんはなんとなく人だかりができていた理由を察したらしい。
そして、何を聞いても無駄だな。って気持ちもあるらしい。
「あそー?あ、そだ!他のクラスもくるっと一周してきたんだけど、ききたいよね?ききたいはず。いうぞー」
今度は何も言わないうちに語り始めた渋谷はやっぱり、尚を離さなかった。
尚はうんざりした顔で、それでも渋谷の話を聞いていた。このまま、尚って押し切られるんじゃないだろうかと、少し心配になった。
「えっとね。三年生は有志が集まって、出店だって。学外、学内、お隣さん、色々散らばるみたい。二年は喫茶系なし。展示が幾つか。クラブの出し物とかが優先なんだって。んで、一年は喫茶系が多いみたい。外、内、お隣とか、喫茶店ばーっか」
「ってか、さっきから外とか内とか何?」
俺が思わず言ってしまった疑問には、既に俺の説明係となってしまっている恭治が答えてくれた。
「あ、すけちゃんそーちょー初めてだもんね?えとね、皐月祭でやったみたいに、文化祭も街ぐるみでねぇ。お隣の学校も一緒に文化祭やるからー両校生徒は学校、街、他校と場所関係なくお祭り騒ぎするのー。出店要請、協力要請けっこう面倒くさいけど、けっこうたのしーよ」
ちなみに、Dクラスは学内で出し物をすることが多いらしい。
生徒、一般入り乱れる中、自分の陣地なめられちゃならねぇとかいう理由で気合もはいるらしい。
確かに、クラスの連中みんな、エプロンしめつつ気合入れてるようなとこ、あったように思う。
「んで、おすすめは元会長と副会長による『家庭教師』という出店」
「…かてきょ?出店?」
「お、くいついたねー?うちが一応進学校なの、しってる?」
一応それは知っている。雅孝さんもいってたし、パンフレットにもそうかいてあった。
だから頷いた。
「で、元ツートップはやっぱり成績もツートップ。というわけで、勉強教えて欲しい人もいるだろう、これはコレの払いがよさそうだと…」
コレというときに親指と人差し指で円をつくる渋谷。それに、モザイクと称して指をバラバラに動かしながら見えづらくする恭治。
結構仲いいよな、恭治と渋谷。
「副会長の提案で。一対一、十分から延長あり、最低三十分保証ありで…」
「カラオケのようなシステムだな」
俺が突っ込む前に、尚がつっこんだ。
それにしても、祭りなのに勉強か…。
「まぁ、ここにいる奴らはかんけーないですよねっていうんで、お勧めだけど、置いといて」
「お勧めしたのにか」
「気にしたら負けだよ、すけちゃんそーちょー」
渋谷の言葉をまるっとスルーする恭治はすごいと思う。たまにすごい強者なことするよな、恭治は。
「一番のお勧めは2Aなんだけど、秘密にしたいみたいだから、これも置いといて。うちのクラスを薦めるのも当たり前すぎるから置いといて。まぁ、満遍なくまわればいいじゃない。めんどくなっちった」
言いたい放題だな、渋谷。
「だから、気にしたら負けだよ、すけちゃんそーちょー」
なんて、遠い目をしていたら恭治に言われてしまった。そうだよな、たぶん、負けなんだよな。
でも、遠い目してる時点で、もう負けたようなもんじゃないのか。なんて、いわないでおこう。







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