準備って大事だけど、面倒よねぇ。
なんて口にはしないけど、思うのはタダ!
クラスの出し物は最後のほうまで色々あってバタバタしちゃったし。練習もままならないというか。
いまいちなきもするまんまなんだけど。
とにもかくにも文化祭の準備。
面倒だけど、これが本祭よりも楽しいってのはよく言われるけれど。
でも、面倒なことだってたくさんあるわけだ。
そしてそういう面倒なことは、もちろん、生徒会がからんでくるわけだ。
そんな面倒な準備。
今は所謂前夜祭。
準備しかしてないけどねー。
お昼間講演会とかあったけど。ま。夜は準備があるわけね。
「兄上こんばんにゃー。トモちゃん返してー。てか兄上も手伝え」
そりゃあもう、何時の間にか我らが生徒会書記さまと、元副会長が消えたとあればね。
気持ちが盛り上がって兄様としけこんじゃったり、あの自分の利がない限り面倒くさがりなところがある二人が面倒だしちょっとサボろうか。なんてまぁ。
去年もありました。
そのくせ、巧妙なんだよ。あの二人。そらおそろしい。
「……もうちょっと…まて」
おっと、もしかしてもうちょっとしたら終わりますか。待ちますか。
「第二ラウンドはなしでお願いするね、トモちゃん。てか、おにいたまも誘わないように」
「……オケ」
もちろん二人が潜んでいるだろう場所のドアの前で。そんなドア越しの会話。二人とも余裕あるご返事ですが、どうやら一戦交え中なようです。なんてこったぱんなこった。
なんとなーくそうなんじゃないかしら。と思いながら、それでもスライド式のドアをたたいて、こんばんにゃーとか言った俺は、勇者でしかない。
このままドアの前に居座るなんてことはしないけど?もうちょっとしたら、他の…たとえばハルルンとかをけしかけようと思います。
第二ラウンドしてたって、強制終了してくれそうだからね。
そんなわけで、俺はその部屋から遠ざかって、人の気配が濃い校舎の中。
そのくせ人気のない廊下をゆっくり歩く。
校庭も、校舎の中も。
ざわざわと喧しいくらいで、陽気で、楽しそうで。
実際楽しいんだろうなぁなんて、なんとなく他人事。
うん、面倒だけど、楽しいよ、俺もね。
けど、なんとなく他人事。
携帯でメールをうって、ハルルンに指令を打ちながら、廊下の窓から空を見上げる。今見えるのは、下弦か上弦かなんて、どうでもイイことを考える。
欠けているけれど、月が綺麗に見えた。
明日の天気予報は、晴れ。
ハルルンに指令を送るために使われた携帯には、未読メールが一つ。
タイトルは、何度も返した証しか残ってないソレのくせに、なんとなく開くことを躊躇う、クソ忙しい時間帯のメール。
俺が忙しかったその時間。もちろん、メールをくれた人も…さっちゃんなわけだが。…も、忙しかったはずで。
「今、暇っちゃー暇だしななぁ」
暇、というか移動しているだけなんだけど。
しばらく画面を見て、もう一度、窓の外を見る。
相変わらずの景色に、未読メールを選択したままになっているだろう携帯のボタンを押す。
さっちゃんとは、夏休みの終わったあたりから穏やかーな関係。
宙ぶらりんのままといえば、宙ぶらりんのまんまなんだけれど。
さっちゃんは皐月祭の時と同じように、やっぱりこのままじゃいけないと思ってるらしい。
はっきりさせなきゃいけないことってあるけど、そのまま曖昧でもいいことだって、たくさんあるのにねぇ。
もうちょっと器用になれたらいいのにね。
なんて、メール見ながらしみじみ。
俺が適当なだけかもしれないけどね。
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