後夜祭。
さっちゃんは恒例になっちゃった、さっちゃんライブを行っている。
俺は近くには行かず、遠くから響いてくるさっちゃんの歌声を生徒会室できいていた。
「…先客がいたでござるよ」
なんて、鼻をすするハルルンがやってきたので、窓枠においた腕を退けた。
「ハルルン何?どうした?失恋?」
「うん」
「…ごめん、図星だったか」
ちゃかしたつもりだったんだけどね。
ふりかえった先にはいつもマイペースに元気なハルるんが、なんか、すっごい泣きました。という顔で立っておりました。
「別にさー失恋なんてさー平気。いっつもしてるもん」
「いつもしてるのと違うから、泣いたんでしょ?まったく、今日はよく人の泣き顔見る日だわ」
抱き締めることもできたんだけど、俺のここはさっちゃん専用ですよ。と冗談言って、目を細めておいた。
「期待してないから、いいもん」
って、言われちゃったけどね。
そっかそっか。
「こーじ副かいちょー先輩こそ。さっちゃん会長様泣かしたって、噂になってるから」
「やぁあねぇ。嫌な意味で泣かしたんじゃないのよ?ちゃああんと、愛し合って嬉しくって泣いちゃったのよ?」
ハルルンはふーんと気のない相槌をうちながら、その辺にある椅子に座った。
「じゃあ、なんで、こんな寂しいとこ、いるの」
俺は携帯を取り出し、ぱかぱかとあけたりしめたりした。
今朝、さっちゃんの前で送ったメール。
実は、さっちゃんへの返信であったの。
見たかどうかはしらないけれど。お返事はない。
それは結局、さっちゃんに『俺のもの宣言』しちゃったことで無駄になっちゃった形なんだよねぇ。
さっちゃんから、前夜祭に届いたメールは『信じることが解らないけれど、信じたいから』ていうのだったんだよねぇ。
それの返事なんだけど。
俺ね、本当のところ、信じてもらえなくていいんだよね。
「んー俺の愛が重たくて痛くて歪んでるから、かなぁ」
俺の愛って、押し付けで、自分勝手で、まぁ、そんなんよくあることなんだけど、それだけじゃなくてなんというか…それこそ重たくて痛くて歪んでるの。
別に何か理由があって、そう、ってわけじゃない。
気がついたら、いつも、恋人は、辛そうで、悲しそうで、しんどそうで、痛そうで、重たそうで、離れたそう。だけど、離れられなくて、死にたそうな顔をする。
あ、追い詰めてるんだ俺。って気がつくんだけど、あ、追い詰めたいんだ俺ってわかってしまうから。
適度に、距離は、あったほうがきっといいんだよねぇ。
ねぇ、さっちゃんが怖いものが、俺であるように。
俺もね、怖いものがある。
「そんで、そんな俺自身が、俺は嫌いではないから」
とても、とても、怖いと思ってる。
「だから、ここにいる」
「いじわるー」
「ん。そうよーいじめっこなの」
そういって、手を振って、生徒会室から出て行く。
逃げてるんだよ?悪い?
だって、追求されちゃったらさ、怖いことに気が付いちゃうからね。






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