冬休みなんてこたつでダラダラしていたら、あっという間に過ぎる。
こたつでみかんにお餅にで、正直太ったわ。とさっちゃんに話すと、大丈夫、卒業式の準備でやせるからというようなことを保証された。嬉しくない。
一月はそんなわけで、師匠が走る十二月と同じようにバタバタと過ぎ去っていった。
途中で三年生が半日登校になったりもした。
生徒会では、ハルルンが振られた振られたといいまわったり、それを微妙な顔で見詰める戸田家の四男がいたりと大変騒がしく過ごしていました。
いや、もちろん、俺とさっちゃんはらぶらぶ…らぶら…いや、さっちゃんがさ、これがまたべったりで。
何を取り戻すつもりかは知らないけれど、何か一部触ってないとダメ。みたいなべったり具合で。
正直、ラブラブというより、ちょっと鬱陶しいよ。
いや、さっちゃんのことはね。そりゃあ、可愛いし、カッコいいし、大好きですが。
でっかい図体べったりはやっぱり鬱陶しいというか。コンパクトサイズでも邪魔じゃないですか、人間一人がべったりって。
「さっちゃん、セパレイトセパレイト」
なんか、セパレイトってトイレとお風呂が別っぽい言い方だけど、さっちゃんは聞きなれたのか…というか言われなれるくらい聞かないでほしいというか、言わせないで欲しいというか。
とにかく、言ったら離れてくれる。
作業中だものね。
俺は、とりあえずお茶を入れに給湯室に向かう。
俺としては、ちょっと距離があるくらいがいいのになぁ。なんで、こんなにべったりかねぇ。いや、身体的にべったりなのは、うん、別になんだけど。
気持ちがね、なんとなく、近い、気がする。
さっちゃんもなんだか安定している気が、するし。
…つまらない気もする。悪い癖だ。
安定してくるとダメだ。グラグラしていてもバランスを取っているくらいが、ちょうどいい。
安定してくるとろくでもないことを俺がやってしまうから。
自らバランスを崩しに行くのだ。
とても、自分本意で申し訳ないが、いつもやってしまうし、止める気もない。
けれど。
「参ったねぇ。気づきたくないのに、気づかなきゃなんないかなぁ。見ないふり、できてたのになぁ…。さっちゃんたら、ホント、上手に俺と付き合っちゃうから」
ぶつぶつ呟きながら、お茶の葉をポットに入れた。
お湯を注ぐとお茶の葉が踊りだす。透明のポットはよく見えて面白い。
透明色の紅い茶が侵食していく。
本当はお湯の温度が下がらないようにすべきなのだが、その様子が見たくてついついそのままにしてしまう。
本当は卒業式前で、こんなことを考えている場合ではないし、それこそ三年生と別れを惜しんでおくべきなのかもしれない。
お湯を入れたときにひっくり返した砂時計が少なくなってきたのを見て、俺は溜息をつく。
また、生徒会室に…さっちゃんがいるところに戻らなきゃ。
「いっそのこと、向き合ってやろうか」
ただ、怖いだけなのに。
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