王道ですか?見学希望ですw


とりあえず、簡単に説明しよう。
王道とは所謂、定番だ。
茨道とは所謂、ある意味新境地だ。
それをどう楽しむかは個人の好き勝手。
世間には腐女子なるものがある。
曰く、男同士のキャッキャウフフとかいうのを楽しむ趣味のある女の子が腐女子。
それの男版が腐男子。…最近は結構いるらしい。というか、認可されたらしい。
そしてそれさえ食い物にするのが、腐女子というやつら。
もちろん、腐男子とて例外ではなく、それを楽しむことができる。
自分に被害さえなければいい。というのが基本姿勢。
そういうわけで、腐男子暦一年くらい。橋上 智樹(はしがみともき)、15歳。
隠しに隠して生徒会、無口会計というおいしい立ち居地を手に入れ、王道を観察し、そこから派生したカップルを愛でようと思っていた矢先、自分に被害…というかフラグがたった。
総愛されだとか、総受とかいうフラグではなかったのだが、驚きのフラグ。
というのも、俺の通っている学校は、たぶん王道学園みたいなものだ。
中高一貫の男子校。意味の解らないランキング。推薦されて最終的にはランキング結果とそう変わらない生徒会選挙。全寮制。
そこまでは間違いなく王道だった気がする。
しかし、寮は学園の敷地内にないため、閉鎖されたとはいいがいたい。更に、同じ地区内にある学校がこれまた大きな学校で、行事といっては一緒にお祭り騒ぎ。そこは共学であるため、本気で閉鎖されていないと思う。しかも、男子校とはいうものの、本当は共学。
曰く、この年頃の男女を傍におくのは危険だ云々ということで、校舎は分けられ、建っている地区さえ違う。
そんでもって、極めつけは今期の生徒会。
王道といえば、俺様生徒会長、腹黒副会長、書記、会計あたりは結構むらがあるが、チャラ男、無口、ワンコ、一卵性双生児…が入るところだ。
しかし、今期の生徒会は一味違った。
一見俺様…にみえるけど、全然そんなことはない、面倒見のいい生徒会長。
腹が黒そうというか表面を取り繕うともしない噂の守銭奴で性格が非常に宜しくない副会長。
会計は無口を演じているとはいえ腐男子の俺だし、書記と書記補佐は二卵性双生児で、お祭り騒ぎ好きと苦労性。
微妙にずれてる気がする。
や、生徒会の形としてはバランスがいいのかもしれないけれど。
それで、驚きのフラグ、だ。
今、今現在。
俺は生徒会副会長に押し倒されている。
そう、押し倒されている。
「……」
無口を演じているため、なんと言っていいものか…というより、何も思い浮かばない。
「橋上」
鋭く、ずる賢い副会長は、実はあまり近寄りたくない人だ。
なんというか、ばれそうだから。
「…おまえ、腐男子って知ってるか?」
まさにそれですが。とはいえない。かくしているから。
というかこの状況でよくそんな台詞が出るものだ。
驚きばかりで身動きが取れない。
「恐らくお前のような人種のことだと思うのだが」
言い切った副会長にいってやりたい。
「ならきくな」
っていうか言ってしまった。
もう、隠すとか隠さないとかそういう問題じゃない。 この状況にもパニックだし、ばれてることにもパニックだ。
「知りたいことがある。あとで、教えてくれ」
そういって、シャツのボタンをはずす手は慣れている。
これはトラウマフラグ。いや、もしかして、そのうち和姦になるだろうフラグ?どうでもいいけど、俺にそれを振らないで欲しい。立てないで欲しい。
「何を…」
するつもりかって、まぁ、押し倒されて、準備とばかりに脱がされてるんだからあれだ。セがつく気持ちいいことだ。
副会長は答えない。その代わり、口角を上げて笑い、俺の腹に噛り付く。
気持ちいいというより痛い。
眉間に皺を寄せると俺を見上げる副会長の目に愉しそうな色がうつる。
そろそろ抵抗したほうがいいんだろうなぁ。とは思うものの、俺は意外と男もいけるんだと、昔迫られたときに知ったし、此処でケツ処女ロストということもない。
何故なら、俺の知る副会長…那須龍哉(ナスタツヤ)は、ガチで完ネコだからだ。
副会長は割り切った性格だから、俺が副会長にはまらない限り、夜ではないのだけど、一夜限りの関係というものになれるのだろう。
俺は下半身がだらしないわけでもないし、無口でクールなキャラを貫くために、失敗はしたくない。
しかし、副会長となら噂にならないと思う。けっこう打算的。
「欲しいと思って」
いまの状況からいうと、まぁ、下的な意味なんだろうけど。
「橋上智樹が、全部欲しいと思って」
いつも通り悪い笑みを浮かべる副会長は、いっそ清清しい。
性的な色気をまったく感じないその笑みは見ほれるほどだ。
「心身ともに」
最後につけたされた言葉に、さすがに日和見みたいな状態になっていた俺も、素で声を上げた。
「はぁ?」
「告白の答えがそれか?」
「いや、ここで告白がきた意味わからんし」
俺は素のままつっこみをいれる。
驚きのフラグ。
無口クールを演じる腐男子会計に思いをよせてるっぽい、性格悪い守銭奴副会長。
なんかもう、何処が好きになったか解らない。
あまったから組み合わせてみた、意外と萌えたしいけると思った。
みたいな組み合わせじゃねぇか。
「俺はあまり我慢はしない主義でな」
「いや、そういう問題じゃねーだろそれ」
「…ギャップもえとかいうやつじゃないか?」
覚えたての単語を並べてみました。みたいなこというのやめてください。そして、そんなことひとつも思ってないだろ。
「橋上、前から思っていたんだが、無口でクールというのは間違いのない選択だったと思うが、お前の有無を言わせない計画性とごり押し具合は色々そのキャラに無理をさせている。しかし、そこがとても気に入っている。というよりも、そこに惚れた」
そこに惚れたって変わった趣味だよ、あんた。しかも、有無を言わせない計画性とごり押し具合って何。俺、どんだけ。
「…で、俺にいい返事もらえると思ってる?」
「いや、別に」
あっさりしたもんだ。
そうだよな、俺はなるべく近寄らないようにしてたしな。それなのにばれてるってあたりも酷いがな。
「欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる。…橋上なら、解ると思うが?まぁ、宣戦布告だ」
妙に、納得しました。
俺も欲しいものを手に入れるための努力は惜しまないタイプだし、副会長は本当に見た目を裏切らない姑息っぷりなのだ。悪い男と表現されるようなら生温いと思う。
性格が悪いことを隠すことがない点はもう、天晴れだ。

で、だ。

結局、その日は副会長と一戦交えて、さすが副会長、すばらしい騎乗位でしたな具合で。
あの手この手を使われて、今に至ります。
あの手この手というか、手練手管に落ちたといっても過言じゃないんですが。
いや、腐男子といえど健康的な男子高校生なんだ、仕方ない。
セフレって形に収まらなかったのは、たぶん、副会長のこだわりだ。
きちんと好意を表してくれるし、俺の萌えポイントをついてくるし、嫁に昇格する前にいい意味で裏切ってくれるし。
なんだ、お見事でした。ってかんじ。
恋愛howtoとかつくって売ったらいいんじゃないかといったら、流布してしまったものは威力が薄い。といっていた。
俺のほかに使うようなことがあっても、俺が嫌なんだけどといったら、キスされた。
くそ、恋愛上手め。
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