好きな奴が居た。
そいつには好きな奴が居た。
俺とはまったくタイプの違う、頭よさそうで男前で、すげぇチームのヘッドだった。
俺はというと、簡単に言うとそこらにゴロゴロいそうなただのヤンキーで、一応小さなチームのトップなんてやってるだけのやつだった。
恋愛するには地位や身分、性別なんか関係ねぇとか言うけれど、やっぱ気になるものは気になるし、格の違ぇはやっぱ弊害になると思う。
俺が好きになった奴もそう、俺とは格が違う。別の世界の人間なのだ。
だから、俺は、そいつが居なくなったってきいてこっそり探しはしても、なんつうか、やっぱ、俺とか関係ねぇんだなって思っていた。
そうして俺は中学を卒業し、高校に無事入学。
「俺な…」
「うん」
「偏差値べらぼうに高い高校来たら、ヤンキーなんて、いないと思ってた」
「うん…」
「いるじゃねぇかよ」
友人がなんとかうなずくのが見えた。
「うん、いるね…俺もね、いないと思ってた…」
平均より少しだけ低い身長の友人とは、寮の部屋が同じということで親しくなった。
「しかも、すげぇいるじゃんよ…」
「うん、いるねぇ…俺と田中くんはどうしてこんなとこにいるんだろうねー…」
中等部どころか幼稚舎までそろえた学園は、内部進学者がほとんどだ。
外部入学者はすべからず、成績優秀者で、いくら俺や俺の友人の山田がボーダーラインすれすれで入学したのであっても、こんなヤンキーばかりが居るクラスにぶちこまれなければならない理由はない。
「あ、あんたらが山田と田中?」
「そう…ですが…」
すっかりヤンキーだった面影なんてない俺に、通りすがりのヤンキーが教えてくれた。
「元ヤンは外部でも家柄がすごくないかぎりここなんだわ。で、あんたら、どんな感じだったんだ?」
俺は山田と顔を見合わせた。
山田は身長もさることながら、いかにももてなさそうなもっさりとした黒髪のぼんやりとした感の強いやつで、俺は身長こそ平均よりは高いが、黒髪で、セットしたりなんかはしてねぇけど、まぁ、寝癖だけはなおした見たいなもっさりぐあいで……つまるところ二人とももっさりした高校生にしかみえなかった。
「山田元ヤン?」
「田中くんこそ元ヤンなの?」
二人してため息をついた。
どおりでもっさりしてるのに気が合うとおもった。
「で、これからどうしよっか?」